著者
水田 孝信 八木 勲
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-031, pp.09-15, 2023-10-10 (Released:2023-10-12)

証券取引所は市場価格の急変動をおさえるため,現在の価格から大きく離れた価格の注文を出せないようにする値幅制限や,価格が急変動した際にある一定時間注文を受け付けないサーキットブレイカーを導入する場合がある.一方で,どちらがより価格の急変動をおさえるかは多くの議論がある.そこで本研究では人工市場を用いて値幅制限とサーキットブレイカーの効果の比較を行った.その結果,値幅制限とサーキットブレイカーは制限幅や時間スケールといったパラメータを同じにすれば,同じ程度に急変動をおさえる効果があることが分かった.しかし,投資家が注文をキャンセルする時間スケールより値幅制限が短いパラメータを持つ場合,制限価格に付近に注文がたまってしまい,その注文が急変を緩和する方向への価格変動を妨げてしまい,サーキットブレイカーよりも価格急変動をおさえる効果は劣ってしまうことも分かった.今回の結果だけを見れば,値幅制限よりもサーキットブレイカーの方が優れているように見える.しかし今回の結果は,誤発注による下落であり,かつ,いずれの規制も個別銘柄に導入された場合のみを分析しているなど,非常に限定的な状況下のことしか示していないことに注意が必要である.

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私は主著で「人工市場シミュレーションによる値幅制限とサーキットブレイカーの効果比較」 https://t.co/jKwL8ZUsAw 共同研究で「執行アルゴリズムがオーダーブックインバランスを考慮したときのパフォーマンスはどのように変化するか?」 https://t.co/tlbXm5hdan という発表を行います。

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