著者
水田 孝信 八木 勲 和泉 潔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.320-327, 2012 (Released:2012-09-27)
参考文献数
37
被引用文献数
1 3

We develop a theoretical model to evaluate settings of artificial markets considering a realistic pricing mechanism. We show the model can evaluate the settings in an environment in which a dynamic micro mechanism plays an important role, for example, a price rebound after a sharp fall in stock markets. Styled facts, which are statistics for long term, can not evaluate such a dynamic situation. We emphasis that such a dynamic situation which the styled facts can not evaluates is very important to analyze market crush and/or market regulations.
著者
星野 真広 水田 孝信 八木 勲
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.AG21-G_1-10, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

Recently, most stock exchanges in the U.S. employ maker-taker fees, in which an exchange pays rebates to traders placing make orders (remaining on an order book) and charges fees to traders taking orders (executed immediately). The maker-taker fees will encourage traders to place many make orders and the orders will provide liquidity to the exchange. However, the effects of the maker-taker fees for a total cost of a taking order, including all the charged fees and market impact, are not clear. In this study, we investigated the effects of the maker-taker fees for the total costs of a taking orders using our artificial market model, which is an agent-based model for financial markets. In addition, we examine the difference of market liquidity in the market between with and without a makertaker fee structure. We found that the maker-taker fees encourage the traders to provide liquidity, whereas increase the total costs of taking orders. Furthermore, we found market liquidity improved when the market maker rebates increased.
著者
水田 孝信 和泉 潔 八木 勲 吉村 忍
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

人工市場を用いて大規模誤発注が価格変動に与える影響の分析を分析した.大量の誤発注が短時間に集中する場合と,少量の誤発注が長期にわたる場合を比較すると,総誤発注株数が同一であるならば,両者は同程度の価格下落を導くことが分かった.また,誤発注時の値幅制限の効果を分析した結果,誤発注が続く期間と同一程度の期間の騰落率を制限する値幅制限が有効であることが分かった.
著者
関 キン 水田 孝信 八木 勲
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4T2GS1004, 2023 (Released:2023-07-10)

ETF(Exchange Traded Funds, 上場投資信託) は,多くの株式や債券などに分散投資した投資信託(ファンド)で,証券取引所で売買できるため多くの投資家に広く普及した.ETF は組み入れている原資産をすべて集めたものと交換ができるので,ETF と組み入れ原資産に価格差があるときに,安いほうを買い,高いほうを売って価格差を利益とする取引(裁定取引)が行われている.しかし,このような裁定取引がETF市場や原資産市場の流動性に与える影響についてこれまで詳細に議論されてこなかった.本研究では,2つの原資産とそれら合計と同じ価値のある1つの ETF の3つの市場からなる人工市場を構築し,原資産と ETF の間で裁定取引が実施されるときとそうでないときで流動性にどのような違いがあるのかを,代表的な流動性指標 (Volume,Tightness,Resiliency,Depth)を利用して検証した.
著者
水田 孝信 八木 勲
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2N5GS1001, 2023 (Released:2023-07-10)

証券取引所は市場価格の急変動をおさえるため,現在の価格から大きく離れた価格の注文を出せないようにする値幅制限や,価格が急変動した際にある一定時間注文を受け付けないサーキットブレイカーを導入する場合があるが,どちらがより価格の急変動をおさえるかは多くの議論がある.本研究では人工市場を用いて値幅制限とサーキットブレイカーの効果の比較を行った.その結果,両者は制限幅や時間スケールといったパラメータを同じにすれば,同じ程度に急変動をおさえる効果があることが分かった.しかし,投資家が注文をキャンセルする時間スケールより値幅制限が短いパラメータを持つ場合,制限価格に付近に注文がたまってしまい,その注文が急変を緩和する方向への価格変動を妨げてしまい,サーキットブレイカーよりも価格急変動をおさえる効果は劣ってしまうことも分かった.今回の結果だけを見れば,値幅制限よりもサーキットブレイカーの方が優れているように見える.しかし今回の結果は,誤発注による下落であり,かつ,いずれの規制も個別銘柄に導入された場合のみを分析しているなど,非常に限定的な状況下のことしか示していないことに注意が必要である.
著者
水田 孝信 八木 勲 高島 幸成
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.2P6GS1002, 2022 (Released:2022-07-11)

多くのファイナンス(金融)研究は,投資戦略の最適化や市場の効率性など,さまざまな仮定の上で議論されている.しかし,その仮定そのものが批判されることも少なくない.投資戦略の最適化が不可能な要因として,投資家自身の売買によって価格を変化させてしまうこと(マーケットインパクト)を最適化時に考慮できないことも考えられる.そこで本研究では,人工市場を用いてバックテストによってシミュレーション期間を通じて投資戦略の最適なパラメータを1つ探すエージェントを追加してシミュレーションを行い,マーケットインパクトを最適化時に考慮できないという要因だけで最適化が安定しなくなることを議論した.その結果,投資戦略のパラメータはある値に収束することなく不安定になることが分かった.他の全員が全く同じに固定されていたとしても,数人が戦略の最適化を行うために,バックテストとその実践投入を繰り返し行うだけで,その戦略は定まることがないし,価格時系列も特定のものには達せず,不安定となった.この最適化の不安定性は,価格時系列の規則性をも不安定にさせうる.このことから,金融市場は本質的に不安定であると言えるかもしれない.
著者
丸山 隼矢 水田 孝信 八木 勲
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.1694-1703, 2019-10-15

近年投資信託のリスクが把握しにくくなっている.なぜならば,投資信託の組み入れ対象となる金融商品の仕組みが複雑になるとともにリスクの大きさが把握しにくくなってきたからである.そこで,投資信託の取引において,投資家が想定外のリスクを負うことを未然に防ぐため,分散投資規制という規制が設けられた.分散投資規制は,1つの資産への投資が過度に集中しないよう,1つの資産への投資額を投資信託純資産の一定割合以下にするものである.これまでに,人工市場を用いて,分散投資規制がファンダメンタル価格急落時に市場に与える影響について分析されている.しかし,金融市場が活況なとき,すなわち,ファンダメンタル価格が急騰するような状況において分散投資規制が市場に与える影響については議論されていない.そこで,本研究では人工市場を用いて分散投資規制がファンダメンタル価格急騰時の価格形成に与える影響について調査した.その結果ファンダメンタル価格急騰時には,ファンダメンタル価格が急騰した資産の取引価格が上昇することが分かった.そして,規制を受けるエージェントの割合が増加するにつれ,その傾向が段階的に弱まり,最終的にはファンダメンタル価格に収束しないことが分かった.また,ファンダメンタル価格急騰時と急落時に関して比較し調査した.その結果,ファンダメンタル価格急落時は急騰時に比べより影響を与えることを確認した.
著者
八木 勲 水田 孝信 和泉 潔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.208-216, 2011 (Released:2011-01-06)
参考文献数
16
被引用文献数
5 1

Since the subprime mortgage crisis in the United Sates, stock markets around the world have crashed, revealing their instability. To stem the decline in stock prices, short-selling regulations have been implemented in many markets. However, their effectiveness remains unclear. In this paper, we discuss the effectiveness of short-selling regulation using artificial markets. An artificial market that is an agent-based model of financial markets is useful to observe the market mechanism. That is, it is effective for analyzing causal relationship between the behaviors of market participants and the transition of market price. We constructed an artificial market that allows short-selling and an artificial market with short-selling regulation and have observed the stock prices in both of these markets. We have demonstrated that our artificial market had some properties of actual markets. We found that the market in which short-selling was allowed was more stable than the market with short-selling regulation, and a bubble emerged in the regulated market. We evaluated the values of assets of agents who used three trading strategies, specifically, these agents were fundamentalists, chartists, and noise traders. The fundamentalists had the best performance among the three types of agents.
著者
水田 孝信 和泉 潔 八木 勲 吉村 忍
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.133, no.9, pp.1694-1700, 2013-09-01 (Released:2013-09-01)
参考文献数
15

We built an artificial market model and compared effects of price variation limits, short sell regulations and up-tick rules. In the case without the regulations, the price fell to below a fundamental value when economic bubble bursts occurred. On the other hand, in the case with the regulations, this over-shooting did not occur and the market was more effective. However, the short sell regulation and the up-tick rule caused the trading prices to be higher than the fundamental value. To summarize these points, the price variation limits have the potential to make the market more effective. We also surveyed an adequate limitation price range and an adequate limitation time span for the price variation limit and found a parameters' condition of the price variation limit to prevent the over-shoots.
著者
遠藤 修斗 水田 孝信 八木 勲
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-031, pp.16-21, 2023-10-10 (Released:2023-10-12)

金融市場の最良気配値付近における注文の偏りはオーダーブックインバランス(OBI)と呼ばれており,この OBI とリターンには正の相関があると考えられている.本研究ではOBIを考慮した執行アルゴリズムをモデル化し,本モデルが市場からどのような影響を受けるのかを人工市場を用いて調査した.
著者
水田 孝信 八木 勲
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-031, pp.09-15, 2023-10-10 (Released:2023-10-12)

証券取引所は市場価格の急変動をおさえるため,現在の価格から大きく離れた価格の注文を出せないようにする値幅制限や,価格が急変動した際にある一定時間注文を受け付けないサーキットブレイカーを導入する場合がある.一方で,どちらがより価格の急変動をおさえるかは多くの議論がある.そこで本研究では人工市場を用いて値幅制限とサーキットブレイカーの効果の比較を行った.その結果,値幅制限とサーキットブレイカーは制限幅や時間スケールといったパラメータを同じにすれば,同じ程度に急変動をおさえる効果があることが分かった.しかし,投資家が注文をキャンセルする時間スケールより値幅制限が短いパラメータを持つ場合,制限価格に付近に注文がたまってしまい,その注文が急変を緩和する方向への価格変動を妨げてしまい,サーキットブレイカーよりも価格急変動をおさえる効果は劣ってしまうことも分かった.今回の結果だけを見れば,値幅制限よりもサーキットブレイカーの方が優れているように見える.しかし今回の結果は,誤発注による下落であり,かつ,いずれの規制も個別銘柄に導入された場合のみを分析しているなど,非常に限定的な状況下のことしか示していないことに注意が必要である.
著者
青山 徹 八木 勲
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.331-332, 2015-03-17

資産運用の1つである株式投資では,これまでにさまざまな投資手法が開発されてきた.その1つに酒田罫線法という投資法がある.これは日本古来の投資法であるが,その他の投資法と比べると認知度が低く,その信頼性について確固たる検証結果が示されたことがなかった.そこで本研究では,酒田罫線法の売買シグナルの精度を調査するシステムを開発した.そして,本システムを用いて,株価が上昇するときのシグナルと言われている「三本戻し,二本押し」が発生したとき,発生時からどれくらいの確率で株価が上昇するかを,上場銘柄(東証一部,東証二部,東証マザーズ,JASDAQ, その他)6年分のデータを用いて検証した.
著者
丸山 隼矢 水田 孝信 八木 勲
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.11, pp.755-763, 2020-11-01

レバレッジドETFとは,日々のリターンが原資産や原指数(例えば,日経平均やTOPIXなど)の価格の変動率に一定の倍数を乗じた値動きをするETFのことを指す.レバレッジドETFは,レバレッジ率を維持する(保有する原資産の純資産総額を,レバレッジドETFの純資産総額の決められた倍数に維持する)よう,原資産の価格が上昇すれば原資産を買い,反対に下落した際は原資産を売るというリバランス取引を日々行わなければならない.そのため,これらの売買が原因で原資産の価格を不安定にさせているのではないかと言われている.これまでに,人工市場を用いた研究によってレバレッジドETFが板寄せ方式の原資産市場の価格形成に影響を与えることが知られているが,ザラ場方式の市場は未調査のままである.そこで本研究では,ザラ場方式の原資産市場においてレバレッジドETFが価格形成に与える影響を調査した.その結果,レバレッジドETFのリバランス取引の最低注文数が小さいほど市場の価格形成に与える影響が大きいことを確認した.
著者
萩原 崇貴 八木 勲 鈴木 紀久子
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.751-752, 2018-03-13

現在日本では,学校でのいじめが大きな問題となっている.これまでにマルチエージェントシステムを用いて効果的ないじめ対策法を検討した研究がある.先行研究ではいじめ当事者のみに着目していたが,実際にはいじめを見て見ぬふりをする「傍観者」や,いじめを止めようとする「仲裁者」も存在し,実証研究では仲裁者がいじめ問題解決の鍵を握っていると言われている.そこで本研究では,いじめ当事者ら以外に傍観者と仲裁者も考慮にいれた実験環境をマルチエージェントシステムにて構築し,いじめ対策行動の一つである「出席停止」の効果を検証した.その結果,仲裁者が存在することで,いじめ被害が軽減されることがわかった.
著者
八木 勲 水田 孝信
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1M4J1303, 2019 (Released:2019-06-01)

近年投資信託(以下,投信)のリスクが把握しにくくなっている.投信の組み入れ対象となる金融商品の仕組みが複雑になるとともにリスクの大きさも把握しにくくなってきたからである.よって投資家にすべてのリスク管理を求めるのは困難なため,投信運用会社側でリスクコントロールさせることを目的とした分散投資規制が設けられた.分散投資規制が市場に与える影響について議論した研究は既に存在しているが,主に市場価格形成について議論している.そこで本研究では,分散投資規制が投資家の運用成績にどのような影響を与えるか調査した.その結果,市場価格が急上昇している市場において,規制対象の投資家はそうでない投資家に比べて運用成績が悪化することが判明した.