- 著者
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丸山 隼矢
水田 孝信
八木 勲
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.10, pp.1694-1703, 2019-10-15
近年投資信託のリスクが把握しにくくなっている.なぜならば,投資信託の組み入れ対象となる金融商品の仕組みが複雑になるとともにリスクの大きさが把握しにくくなってきたからである.そこで,投資信託の取引において,投資家が想定外のリスクを負うことを未然に防ぐため,分散投資規制という規制が設けられた.分散投資規制は,1つの資産への投資が過度に集中しないよう,1つの資産への投資額を投資信託純資産の一定割合以下にするものである.これまでに,人工市場を用いて,分散投資規制がファンダメンタル価格急落時に市場に与える影響について分析されている.しかし,金融市場が活況なとき,すなわち,ファンダメンタル価格が急騰するような状況において分散投資規制が市場に与える影響については議論されていない.そこで,本研究では人工市場を用いて分散投資規制がファンダメンタル価格急騰時の価格形成に与える影響について調査した.その結果ファンダメンタル価格急騰時には,ファンダメンタル価格が急騰した資産の取引価格が上昇することが分かった.そして,規制を受けるエージェントの割合が増加するにつれ,その傾向が段階的に弱まり,最終的にはファンダメンタル価格に収束しないことが分かった.また,ファンダメンタル価格急騰時と急落時に関して比較し調査した.その結果,ファンダメンタル価格急落時は急騰時に比べより影響を与えることを確認した.