著者
高橋 英彦
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.249-254, 2012 (Released:2017-02-16)
参考文献数
18

情動,意思決定,意識といったこれまで心理学,経済学,哲学などの人文社会の学問で扱ってきた領域が,fMRIを中心とした非侵襲的脳イメージングや認知・心理パラダイムの進歩により,脳神経科学の重要なテーマになり,社会的行動の神経基盤を理解しようとする社会脳研究,social neu-roscienceとして急速に興隆してきている。精神・神経疾患を対象とした社会脳研究も精力的に行われてきている。精神・神経疾患の意思決定障害の分子神経基盤の理解に向け,我々が分子イメージング(positron emission tomography)を用いて心理学,経済学などの研究者と学際的に研究を進めてきた成果の一例を紹介する。線条体のD1受容体の密度が低い人ほど,低確率を過大評価し,高確率を過小評価する認知バイアスが強かった。また視床のノルアドレナリントランスポーターの密度が低い人ほど,損失を忌避する傾向が強く慎重な意思決定をする傾向があることを見出した。この分野が発展し,精神・神経疾患の意思決定障害の客観的評価や新規薬物療法の開発に繋がることを期待する。

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作業療法を行う際に意思決定について考えるのって本当に重要だと思います! 欲求や情動といった心理学•哲学など人文社会の学問で扱われてきた知見に加えて、脳神経科学の視点を取り入れて行かなきゃ。 精神・神経疾患の意思決定障害の神経基盤の理解に向けた学際的研究 https://t.co/b1Yaa01IcT

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