著者
柳下 祥
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.113-116, 2017 (Released:2019-04-10)
参考文献数
11

精神疾患の多くは前頭葉や辺縁系といった脳部位および神経伝達物質であるモノアミンの異常の関与が考えられている。これら脳部位やモノアミンは環境からの感覚入力を元に価値づけや意欲・行動選択を生み出す神経基盤と考えられ,ヒトを含む動物の環境適応に重要な脳機能といえる。このため,前頭葉や辺縁系のシナプスとモノアミンの神経機構の機能理解は精神疾患における社会適応の障害を理解するのに役立つ可能性が高い。モノアミンは前頭葉や辺縁系における価値記憶の形成に関与し,その後,各脳部位の価値記憶は協調したり,拮抗したりしながら行動選択や意欲の制御をしているといった仮説モデルが考えられる。最近の光を使った実験技術の進歩によりこのモデルをシナプスレベルから行動まで対応づけて理解することが可能になってきた。このような神経シナプス機構を理解したうえで,シナプスに発現する精神疾患関連遺伝子の操作などにより,適応機能障害の一般的な理解が可能ではないかと考える。

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