- 著者
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鄺 知硯
- 出版者
- 日本映画学会
- 雑誌
- 映画研究 (ISSN:18815324)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, pp.30-49, 2018 (Released:2019-03-15)
- 参考文献数
- 22
本稿は、1960年代前後の香港映画業界がいかに日本映画から技術を吸収したのかという経緯を踏まえ、ワイヤーアクションという技術に着目し映画の内容的な側面からこの技術吸収の意味と貢献を考察していく。1950年代から邵氏によって次第に日本から香港映画に輸入された、イーストマン・カラー、シネスコ、照明、ワイヤーアクションなどの技術的助けを得た香港北京語映画は急速に「現代化」の道を歩んで行った。 そして、香港映画業界で武術指導を務めた劉佳良と唐佳が日本映画からワイヤーアクションの技術を摂取・改良しつつ、1960年代ブームになった新派武侠映画でも応用した。この技術の活用によって、香港新派武侠映画は、技術と資金の乏しかった旧派武侠映画とは明白に区別されたジャンルとなり、市場における主流の地位を占めるようになった。このように、ワイヤーアクションに代表される技術的な成熟と香港映画におけるスペクタクル的表現との関連性が明白であることを指摘した。