著者
福江 良純
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.57-62, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4
被引用文献数
1

彫刻とは, 材料の素材が持つ3次元の立体性を本質的な形式とする芸術である.線遠近法が平面に奥行き概念を形成するよりも古くから, 彫刻は立体であり続けている.しかし, 彫刻が3次元であるという自明の事実と, 彫刻を立体として捉えるということは同一ではない.そこには, 奥行き概念を平面上で獲得する絵画空間の逆説性にも似た, 特異な立体認識の仕組みがある.つまり, 立体概念とは, 単なる知覚以上の内容を意味し, その点では, ある面主観的な認識といえる.だが, それは2次元の平面に投影された線の感覚を必要とし, それは技術的な検証が可能である.ただし, 彫刻における線の感覚は, 物性を伴う実体に対する操作を直接導くもので, そこに彫刻の独自性がある.つまり, 彫刻の立体概念には, 時間, 行為といった形状とは別種の要因が密接に関係しているのである.

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