著者
馬場 一美
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.71-78, 2016-06-30 (Released:2016-08-10)
参考文献数
24

睡眠時ブラキシズムは睡眠中に行われる歯ぎしりとくいしばりの総称で,咀嚼筋活動を主体とした非機能的運動である.睡眠時ブラキシズム関連の歯科的トラブルには枚挙にいとまがなく,特にインプラント治療を行う患者のブラキシズムには注意を要する.例えばオッセオインテグレーションが獲得される前にブラキシズムの力が特定のインプラント体に集中すると脱落のリスクが増す.また,オッセオインテグレーションが獲得された後であっても,ブラキシズムによると考えられる上部構造の破損やスクリューのゆるみなどの問題が頻繁に報告されている.歯根膜をもたないインプラントの上部構造,特に最後臼歯の補綴装置咬合面には力が集中するため特別な配慮が必要となる.高度な知識と技術を駆使して渾身のインプラント治療を行っても,ブラキシズムの評価と対応を誤ると不幸な結果を招くことになる.睡眠時ブラキシズムを合理的かつ確実に抑制する方法はないが,臨床的には想定されるリスク因子への対応とブラキシズムの力から顎口腔系を護ることを主眼としたオクルーザルスプリント療法が併用される.ここで,ブラキシズムによって顎口腔系に生じる力の分布は咬合接触関係によって規定されるため,スプリントに付与する咬合接触関係には注意を要する.つまり,睡眠時ブラキシズムに関連したバイオメカニクスを理解し,合理的にオクルーザルスプリントをデザインする必要がある.本稿では,睡眠時ブラキシズムに関連する睡眠生理学とバイオメカニクスを解説し,インプラント患者の睡眠時ブラキシズムへの対応について解説する.

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