著者
野口 和典
出版者
日本門脈圧亢進症学会
雑誌
日本門脈圧亢進症学会雑誌 (ISSN:13448447)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.19-24, 2013 (Released:2015-12-22)
参考文献数
11

腹腔-静脈シャント(シャント)術は,腹腔内と中心静脈を一方向弁付きのシリコンカテーテルで短絡し,腹水を強制的に大循環に還流し,難治性腹水を減少・消失させる治療法である.多くは非代償性肝硬変の大量腹水が対象となるが,この門脈圧亢進状態下の腹水貯留では,門脈圧>腹腔内圧(腹水圧)>中心静脈圧(CVP)の順で,圧勾配が存在している.シャントによる腹水還流は,術後早期は腹水圧―CVPの圧差に依存し,晩期は呼吸に伴う腹腔圧―胸腔圧差によって形成される.大循環に還流された腹水は,尿として排泄されるため,術後1~2週で腹水圧―CVPとなり,CVPも次第に低下正常化する.晩期のシャント内流量は,門脈内から腹腔内に移動する水のみとなり,量も減少してくる.この圧勾配全般の減少による術後の食道静脈瘤消退例が存在する.以上のことにより,術前の門脈圧亢進状態には,腹水貯留自体が,圧亢進因子として加味している可能性がある.

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