著者
宮本 結佳
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.391-407, 2012-12-31 (Released:2014-02-10)
参考文献数
25
被引用文献数
2

近年, 過疎等多くの問題を抱えた農山漁村において, 観光への取り組みが活発化している. 先行研究においてこれまで明らかにすべき問題として残されてきたのは, 第1に「来訪者とのいかなる相互作用によって住民は認識を転換し, 主体的な対応を生起させるのか」, 第2に「アクター間の関わりの結果, いったいどのような資源が新たに生成されるのか」の2点である. 本稿では, 現代アートを媒介として地域の環境を保全し, それらの資源を生かした観光に取り組んでいる香川県直島の事例を通じ, この問いについて検討した.第1の問いに対して分析を通じて明らかになったのは, 相互作用を通じて来訪者のまなざしを知り, 観光における有力な資源を自らがコントロールしえるという状況を認識してはじめて, 住民の側の主体的な対応が生起するという事実である. さらに, 第2の問いに対して分析を通じて明らかになったのは, 観光という場における相互作用を通じて, 住民は地域表象を創出させ, 新たな資源を生成しているという事実である.地域に存在する資源を生かした観光を対象とした研究のなかでは「観光という場のなかで住民の主体的な対処はいかにして可能となるのか」に関心が寄せられてきた. これに対し, 本稿の事例が提示するインプリケーションは, 住民が相互作用による認識転換をベースに, 地域表象の創出という新たな資源生成を通じて, 主体性を確保する可能性の存在である.

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