著者
鈴木 信弘
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.11-24, 2014-06-25 (Released:2015-03-10)
参考文献数
119
被引用文献数
1 2

菌類は未同定,未報告の種も含めると百万種を超えると言われる.そこにはそれらを宿主とする多種多様なマイコウイルス(菌類ウイルス)の世界も広がっている.ここ20年に渡る一握りのマイコウイルスの研究から,精製したウイルスの粒子に感染性があることが証明されて人工接種法の開発に至り,ウイルス研究に必要な他の技術革新ももたらされた.植物病原糸状菌の一種であるクリ胴枯病菌は,マイコウイルス研究のモデル宿主菌としての地位を確立しつつある.本菌では,いまだ完全ではないがアノテーション付きのドラフトゲノム配列情報も公開され,関連する研究ツール・遺伝子改変技術もよく整備されている.また,最近になり,分類学上の目が異なる宿主菌(白紋羽病菌)に自然感染していた多くのウイルスが本菌で複製できることが判明し,マイコウイルス研究を進めるための実験宿主菌としての一面も併せ持つことも明らかになった.本稿では,マイコウイルスの一般的な性状,クリ胴枯病菌の実験ウイルス宿主としての優位性を概説し,さらにクリ胴枯病菌を舞台に得られた最近の興味深い解析例,「目立たないウイルスの複製を制御するDI-RNAとRNA サイレンシング」ならびに「RNAサイレンシングとウイルスRNAゲノムの組換え」,を紹介する.

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