著者
細見 彰洋 草刈 眞一
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.9-13, 1995-05-01 (Released:2012-10-29)
参考文献数
6
被引用文献数
3 1

成熟直前のイチジクの果実腐敗における, 酵母菌の関与について調査した. 1. 圃場では, 果実全体が軟化腐敗し果皮に菌そうが生ずる, 黒かび病特有の腐敗果と, 果実内部が淡褐色に軟化腐敗し菌そうのない腐敗果が認められた. 前者からは, Phizopus nigricansが分離された. 後者からは長楕円形 (Type-L) と楕円形 (Type-O) の2種類の酵母が分離され, Type-Oを接種した果実切断面の果肉に部分的な腐敗が発生した.2. 圃場の軟腐果実に来訪していた昆虫は, ほとんどがキイロショウジョウバェ Drosophila melanogaster 成虫であった. 本虫を歩行させたPDA培地からは, R.nigricans Type-O に類似した酵母が分離された. 両菌をイチジク果実に接種した結果, R. nigricans では, 果実の開口部と果肉の何れに接種しても, 著しい腐敗が発生した. 一方, 酵母では, 果肉に接種した場合にのみ部分的な淡褐色の腐敗が発生した. 3. ファイトトロソ内の樹上のイチジク果実に, 圃場の軟腐果実から採取したキイロショウジョウバエの成虫を遭遇させた結果, 酵母 (Type-O) の接種で見られたものと同様の腐敗が高率に再現された. 以上から, 本邦におけるイチジクの成熟直前の腐敗については, その主な要因は, R.nigricansによる黒かび病である. しかし, 一部には酵母の一種による腐敗が, 単独もしくは複合して存在し, この媒介には少なくともキイロショウジョウバエが関与していると考えられた.

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