著者
矢島 道子
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.34-41, 1999-09-10 (Released:2017-10-03)
参考文献数
26

メアリ・アニング研究が進んできて, メアリの全貌が少しずつ明らかにされてきた.これは古生物学史が, 英雄伝説ではなく, 社会全体の古生物への認識がどのように変化してきたかを探る, 新しい方向で進み始めたことでもある.ただし, トレンズが1995年に強く批判しているにもかかわらず, 実際には, メアリの紹介がいまだ, 子供時代の発見に集中している.新しい古生物学史もまだ歩み始めたばかりである.科学史家がさらに声を大きくして主張していかねばならない.1998年, イギリス古生物学会はアマチュアへの賞をメアリ・アニング賞と改名した.メアリ・アニングは真のアマチュアであろうかという問題もあるが, ここには, 古生物学を誰が担っていくのかという大きな問題がかくれているように思う.メアリ・アニングの生きていた時代には, 化石の発見そのものが学問を大きく進めていたから, 古生物学者と化石採集家が共同作業をしていたと思う.現在のように化石について研究することと, コレクターとして化石を蒐集することが別ではなかった.化石の研究者と採集者が協力して, 化石への理解を深めていたように思う.現在でも古生物学の本質は変わらないと思う.古生物学者はその学問の意図を多くの人々に明確に示さなければならないだろうし, コレクターは学問の動向を警戒するとはいわないまでも, もっと注目していかなければならないであろう.メアリ・アニングの研究史を通して, もっと古生物学が身近なものになり, 実り豊かな古生物学の研究が生まれてくることを祈る.

言及状況

外部データベース (DOI)

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@uCeratops そのような話は聞いたことがないですね… リンク先の1999年発行の文献では、彼女の私生活についてはほとんど分かっていないとされていますが、もしかすると後の研究で何か分かっているのかもしれませんね。 気になるところです。 https://t.co/nrQExtVhHx

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