著者
柴本 枝美
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.121-132, 2006-03-31 (Released:2017-04-22)

日本において性教育に関する議論がなされるようになったのは,明治末期のことである。以降,公娼制度や性病蔓延の問題など性に関する問題が社会問題として顕在化するに従って,性教育の必要性が論じられるようになった。本稿で検討する山本宣治(1889-1929)は,同志社大学予科において,「人生生物学」と名づけた性教育を実践していた人物である。本稿では,当講義で与えられていた評価課題を検討し,受講生が作成したレポートを分析することを通じて,実践としての「人生生物学」講義の意義と限界を明らかにする。山本が講義の目的としたのは,学生が自らの人生に対する理解を深めるための科学的な知識を提供することであり,人生に関係の深い分野の知識を選択し,排列して講義を進めていた。講義において山本は,レポートと筆記試験で評価を行っている。レポートでは,学生が文献に示されている理論を読み込むことで,まずは科学的な知識を習得することが期待されていた。実際に学生が書いたレポートの大半は,遺伝学や進化論,科学概論の文献を要約あるいは一部抜粋したものであり,山本がめざしていた「推理思索法」が必ずしも実現されていたとはいえない。しかし,文献を読み科学に対峙している点では,山本が「人生生物学」講義でめざした性教育における第一段階の目的,つまり性に関する科学的な知識を与えることは実現されていたと評価することができる。

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