著者
山﨑 正純
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.2-12, 2011-08-10 (Released:2017-05-19)

読書行為の本質は文脈形成行為である。そして文脈を形成する行為こそ、もっともプライベイトな私秘的領域において文学作品を私物化し、一体化をなし遂げる行為である。だがその一方で読書行為は、読者を取り巻く不可解な世界の説明行為に転化することで、文学作品の価値を再生産することができる。すなわち、読書という私的行為は公的領域による権威付けの誘惑と脅威とに同時にさらされることで持続可能な行為である。私的領域と公的領域とのこうした共犯性は、家父長制の下に置かれた女性の自己表現にもみられるが、同時に公私領域の再編成の可能性を示唆するテキストとして位置づけることも可能である。

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