著者
兼岡 理恵
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.2-9, 2013 (Released:2018-05-18)

環境をどのように表現するか。特に自然環境においては、実際の景・事象を客観的に描く立場と、理想の景・イメージとして文芸的に表現する、という二つの立場がある。古代散文における雪の記事をみると、たとえば六国史の雪は、災厄の予兆・雪害から儀式に関するものへと変容しており、朝廷における雪への関心の変化が窺える。一方『摂津国風土記』逸文には、鹿の背に積もる雪が塩の譬喩として表現されるが、その聯想の背景には、野に降り積む雪の文芸的イメージ、さらに同地の地理的環境がふまえられており、文芸的観点から雪を描いた記事といえる。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (7 users, 7 posts, 27 favorites)

前に雪を詠んだ万葉歌は少ないという話を見かけたのがこの記事で、全文読んでみたんですが逆に万葉集にも懐風藻にも雪は多いけど古代の正史には降雪の記事がかなり限られるとあって、こちらもかなり目から鱗でした。 J-STAGE Articles - 気象によせる関心 https://t.co/eamHty9JN7

収集済み URL リスト