- 著者
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松本 郁代
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.7, pp.16-26, 2013-07-10 (Released:2018-07-13)
慈円『愚管抄』の歴史叙述を、慈円が構想した「末法」という一点の現実から生じた正統性のエクリチュールとして読み解いた。本稿で捉えた「定型」とは、慈円が叙述に構想した神話的身体としての天皇が、歴史的・社会的文脈、世界観を構築する正統性のベクトルとしてである。かかる意味世界における『愚管抄』とは、正統性を体現した神話的身体としての天皇が社会を開/閉した「定型」の叙述であり、愚管抄的世界を生んだ中世を開/閉する扉のような存在であった。