著者
楜沢 健
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.23-33, 2019-04-10 (Released:2024-05-11)

細井和喜蔵『女工哀史』(一九二五年)の巻末には、細井が各地の工場で出会い、蒐集した「女工小唄」が収録されている。数え歌、俗謡形式の小唄は、口承で歌い継がれる即興の替え歌=労働唄である。そこには近代の「書き言葉」「標準語」が切り捨ててきた言語の多様性、集団性が豊かに息づいている。花田清輝は「柳田国男について」(一九五九年)で、プロレタリア文学運動の限界は、「活字文化」にその視野が限られ、「口承文化」に息づく言語の問題に無関心でありつづけた点にある、と指摘した。ここでは、花田の問題提起を手がかりに、プロレタリア文学に息づく「小唄」集団性、その諸相に光をあてた。

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