- 著者
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菅原 享
宮下 晃
三田村 孝
飯田 武揚
- 出版者
- 公益社団法人 日本化学会
- 雑誌
- 日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
- 巻号頁・発行日
- vol.1988, no.4, pp.597-603, 1988-04-10 (Released:2011-05-30)
- 参考文献数
- 23
- 被引用文献数
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1
cis-ジクロロジアンミン白金(II)錯体(以下cis-DDPと略記する)には制がん作用があり,現在各種がんの臨床治療に広く使用されている。このcis-DDPは生体内において特異的にがん細胞のDNAと結合し,そのDNAの複製を阻害することが知られている。このような事実を踏まえて,白金錯体の配位子を種々変えた新規の白金錯体の報告が数多くだされているが,担体配位子に硫黄含有配位子を用いた白金族錯体についての研究は,ほとんどなされていない。そこで担体配位子に硫黄含有配位子を用いた白金族錯体であるジクロロ(2-アミノエチルスルポニル)白金(II)錯体およびジクロロ(2-アミノエチルスルポニル)パラジウム(II)錯体を新規に合成し,UV,UV差スペクトル,解離塩化物イオンなどの測定から,これらの白金族錯体のがん細胞障害性,DNAおよびDNA構成ヌクレオシドとの相互作用を研究した。その結果,がん細胞増殖抑制・障害性では,ジクロロ(2-アミノエチルスルホニル)白金(II)錯体ではアドリアマイシン耐性マウス白血病細胞に,ジクロロ(2-アミノエチルスルホニル)パラジウム(II)錯体ではマウスメラノーマ細胞に対してそれぞれがん細胞障害性を示すことがわかった。また,DNAおよびヌクレオシドとの相互作用では,ジクロロ(2-アミノエチルスルホニル)白金(II)錯体とジクロロ(2-アミノエチルスルポニル)パラジウム(II)錯体との結合様式に差異があることが示唆された。