著者
宮野 勝
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.101-114, 1986-11-20 (Released:2009-03-01)
参考文献数
27
被引用文献数
2

投票率を例として、標本調査が社会の実際と異なる理由を三分し、その相対的重要性を調べる方法を考察する。データとした1980年衆議院選挙に関する明るい選挙推進協会の全国3000サンプル調査の投票率は、選挙結果より12.4%高かった。第一に、この差を、(1)標本誤差、(2)「誤答効果」、(3)非回答バイアス、の三原因に数学的に分解できることを示した。第二に、層別二段抽出法による標本誤差の5%信頼区間はわれわれのデータでは±2.2%であることから、標本誤差以外の二原因によって10.2%~14.6%の誤差がもたらされていると推測した。そこで、第三に、点推定である12.4%を用いて、この誤差を「誤答効果」と非回答バイアスとに分解することを試みた。一つ目の方法は、非線形回帰分析を用いた統計的手法で、データが十分に存在する場合に適用できる。二つ目の方法は、先験的にまたは他のデータから仮定を導入して、数学的に解く手法である。われわれは二つ目の方法を用いて三種類の異なる仮定の各々について推定した。その結果、非回答バイアスが重要で、7~13%の差をもたらし、「誤答効果は」0~6%の差をもたらしたと推測された。第四に、性別などの属性別の分析が可能であり、投票率のデータでは、男性の方が誤差が大きく、非回答バイアスのウェイトも大きい。また、投票―棄権と回答―非回答とが正の相関を持ち、特に非投票者に非回答バイアスの影響が大きい。以上の検討は、標本調査データの特質の理解に重要であり、かつ、投票率以外の項目、例えば、投票政党、教育年数、所得、等にも適用可能である。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

収集済み URL リスト