著者
上野 友也
出版者
日本平和学会
雑誌
平和研究 (ISSN:24361054)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.1-21, 2023-03-31 (Released:2023-03-25)
参考文献数
27

国連安全保障理事会は、LGBTに対する戦時性暴力についてどのような議論を展開し、どのように対立してきたのであろうか。それにはどのような展望があるのか。それを明らかにするのが、本稿の目的である。LGBTに対する暴力と差別の問題は、大国間・地域間対立が先鋭化しているテーマの一つでもある。欧米諸国、ラテンアメリカ諸国、イスラエルは、LGBTの権利の擁護に積極的である一方、ロシア、中国、アラブ諸国、アフリカ諸国、アジア諸国の多くがLGBTの権利の擁護に消極的あるいは否定的な立場をとっている。両者の対立は、国連安全保障理事会においても繰り広げられている。国連安全保障理事会は、「女性・平和・安全保障」のアジェンダを構築したが、LGBTの権利の擁護を目的としていない。しかし、このアジェンダに関する国連安全保障理事会の決議、議長声明、議事録を分析することで、国連安全保障理事会がLGBTに対する戦時性暴力に対して一致した行動がとれない状況にある一方、国連LGBTIコア・グループに所属している理事国が戦時性暴力からのLGBTの保護に積極的な発言をしていることがわかるであろう。現在のところ、国連安全保障理事会において、戦時性暴力からのLGBTの保護に積極的な国家と、消極的あるいは否定的な立場の国家は拮抗しており、多くの理事国の賛同を得て決議や議長声明を採択することが困難であることに変わりはない。

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