著者
上野 友也
出版者
日本平和学会
雑誌
平和研究 (ISSN:24361054)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.1-21, 2023-03-31 (Released:2023-03-25)
参考文献数
27

国連安全保障理事会は、LGBTに対する戦時性暴力についてどのような議論を展開し、どのように対立してきたのであろうか。それにはどのような展望があるのか。それを明らかにするのが、本稿の目的である。LGBTに対する暴力と差別の問題は、大国間・地域間対立が先鋭化しているテーマの一つでもある。欧米諸国、ラテンアメリカ諸国、イスラエルは、LGBTの権利の擁護に積極的である一方、ロシア、中国、アラブ諸国、アフリカ諸国、アジア諸国の多くがLGBTの権利の擁護に消極的あるいは否定的な立場をとっている。両者の対立は、国連安全保障理事会においても繰り広げられている。国連安全保障理事会は、「女性・平和・安全保障」のアジェンダを構築したが、LGBTの権利の擁護を目的としていない。しかし、このアジェンダに関する国連安全保障理事会の決議、議長声明、議事録を分析することで、国連安全保障理事会がLGBTに対する戦時性暴力に対して一致した行動がとれない状況にある一方、国連LGBTIコア・グループに所属している理事国が戦時性暴力からのLGBTの保護に積極的な発言をしていることがわかるであろう。現在のところ、国連安全保障理事会において、戦時性暴力からのLGBTの保護に積極的な国家と、消極的あるいは否定的な立場の国家は拮抗しており、多くの理事国の賛同を得て決議や議長声明を採択することが困難であることに変わりはない。
著者
初瀬 龍平 野田 岳人 池尾 靖志 堀 芳枝 戸田 真紀子 市川 ひろみ 宮脇 昇 妹尾 哲志 清水 耕介 柄谷 利恵子 杉浦 功一 松田 哲 豊下 楢彦 杉木 明子 菅 英輝 和田 賢治 森田 豊子 中村 友一 山口 治男 土佐 弘之 佐藤 史郎 上野 友也 岸野 浩一 宮下 豊
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、戦後日本における国際関係論の誕生と発展を、内発性・土着性・自立性の視点から、先達の業績の精査を通じて、検証することにあった。研究成果の一部は、すでに内外の学会や公開講座などで報告しているが、その全体は、『日本における国際関係論の先達 -現代へのメッセージ-(仮)』(ナカニシヤ出版、2016年)として集大成、公開する準備を進めている。本書は、国際政治学(国際政治学、政治外交史)、国際関係論(権力政治を超える志向、平和研究、内発的発展論、地域研究)、新しい挑戦(地域研究の萌芽、新たな課題)に分けた先達の業績の個別検証と、全体を見通す座談会とで構成されている。