著者
堀井 郁夫
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.71-79, 2016 (Released:2016-02-05)
参考文献数
12

創薬早期における臨床開発候補化合物選択時に, 動物実験データからその結果のヒトへの外挿性について薬効と安全性を検索することは重要である. 一般的に, ヒト組織を利用した医薬品探索・開発研究には, 開発候補化合物のスクリーニングを目的として生体外モデル系の開発, 医薬としての標的の特定, 有効性・安全性に関わる標的の分布とその機能の検討などがなされている. 近年, この10年の医薬品治療において, 治療・改善がほぼ十分に見込まれる疾病に対して, いまだ不十分な疾病領域 (癌, 中枢神経系疾患など) があることが提示されてきている. 創薬におけるこれからの挑戦は, いまだ充足されていない疾病領域への対応であることが明白になってきた. 分子生物学の新しい進展に伴い, 遺伝子解析に関わる科学的・技術的向上がみられ, 病気・病因の理解度が高まってきた. その一環として, 以下に示すような事項の検索に基づく個別化医療への道が開かれ, 診断に基づく適確医療の方向へと進みつつある. ①病態の理解と医薬としての展開の可能性の検討. ②探索研究とその臨床応用時の両方に関わるバイオマーカーの探索・設定, 測定系開発およびそのバリデーション. ③臨床応用時の患者の層別化あるいは選択のための診断方法の開発とそのバリデーション. 最近の新薬創生の場では, その創薬戦略における新薬に対して「病気・病因に対する正しい標的か?, それに対応する正しい化合物が選択されているか?, 対応する正しい患者が選択されているか?」という疑問が投げかけられている. 医療の場でのこのような思索が, 従来型医療 (one-size-fits-all) から個別化医療 (personalized medicine) ・適確医療 (precision medicine) へと道を開けつつある.

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