著者
倉石 治一郎
出版者
総合危機管理学会
雑誌
総合危機管理 (ISSN:24328731)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.37-47, 2018-03-11 (Released:2019-12-26)

平成16 年の国民保護法成立以降、内閣官房と都道府県との国民保護訓練が年数回ずつ実施され、一応の成 果を収めてきた。ここ数年来、我が国周辺情勢は緊張し、東シナ海での中国との利害対立や、北朝鮮の核開発 及び弾道ミサイル開発といった問題は安全保障上の脅威を増しつつある。そのような中、本年3 月中旬、秋田 県において我が国初の弾道ミサイル訓練が実施されたが、奇しくもその数日前に北朝鮮による弾道ミサイルが 日本海に発射され、国民保護訓練の重要性そして必要性が喫緊のものとなった。従前の国民保護訓練において 最も問題であるのは、緊急対処事態を前提とした緊急対処保護訓練に終始し、武力攻撃事態での国民保護訓練 は未実施のままとなっていることである。自然災害と武力攻撃災害とでは、知見の有無において国民の避難動 向が大きく異なることが予想される。今後、本格的着上陸侵攻を前提とした総合的な対処訓練の実施は喫緊の 課題であろう。また、有事において戦場は住民混在の状況であり、この際に自治体や警察、そして消防がいか に国民保護措置を実施するかという具体的イメージを官民双方が十分に持ち合わせていないのは重大な問題 である。本報告は、そういった問題点と課題を明らかにし、今後の論点整理の一助とすることを目的とする。 緊急対処事態のみならず、武力攻撃事態における国民保護措置の具体的なイメージに基づく適切な計画策定と 対処要領の広報そして教育が重要である。

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