- 著者
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大谷 直子
- 出版者
- 一般社団法人 日本女性科学者の会
- 雑誌
- 日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.9-19, 2015-03-27 (Released:2015-03-31)
- 参考文献数
- 22
細胞には異常を感知し、その細胞自身や生体の正常を保とうとする様々な生体防御機構が備わっている。細胞老化もそのような生体防御機構のひとつで、発がんの危険性のある損傷が細胞に加わった際に誘導される不可逆的細胞増殖停止であり、生来細胞に備わった重要な発癌防御機構である。しかし、自ら死滅するアポトーシスとは異なり、細胞老化を起こすと、生体内において長期間生き続ける可能性がある。最近、生き残った老化細胞から、様々な炎症性サイトカインや細胞外マトリクス分解酵素といった多くのタンパクが産生・分泌されることが明らかになり、この現象はSASP(senescence-associated secretory phenotype)と呼ばれている。今回我々は、肥満にともなう肝臓がんモデルにおいて、肝臓の間質に存在する肝星細胞が細胞老化とSASPを起こし、肝がんに促進的ながん微小環境を形成することを見出した。さらに肝星細胞の細胞老化は肥満により増加した腸内細菌が産生する2次胆汁酸のひとつ、デオキシコール酸により促進されることを示した。