著者
井波 真弓 齋藤 兆古 堀井 清之
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会論文集 (ISSN:13465260)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.25-32, 2010 (Released:2010-04-30)
参考文献数
17

本稿の目的は島崎藤村作『破戒』における封建的な旧社会と自己解放された新社会に生きる登場人物のそれぞれの感情の変化を検証することである. 要素として「世間」,「社会」,「世の中」の三つの語を選び,章ごとの使用頻度を新社会と旧社会とに分けて調べた.得られたデータへ離散値系ウェーブレット多重解像度解析を適用した. その結果,「世間」の頻出度合いの変化にはほぼ同様の傾向が見られ,双方ともに日本の古来から使用されている語「世間」と「世の中」に対する共通認識があることが確認された.新社会の登場人物が自己の考えを主張する場合「社会」が多くなるが,旧社会における「社会」の語は新社会に対抗したり,批判したりする時に多くなり,「世間」としての立場を主張するために「社会」を援用していることが示された.立場を主張する上で語の選択に大きな意味があることが明らかとなった.

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