著者
井波 真弓 岩崎 晴美 宮沢 賢治 土屋 宏之 齋藤 兆古 堀井 清之
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会論文集 (ISSN:13465260)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.8-12, 2005 (Released:2005-05-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

本稿の目的は『源氏物語』第二帖「帚木」から第三帖「空蝉」にかけての「空蝉物語」 に離散値系ウェーブレット変換を適用し,源氏と空蝉の出会いから終焉までの,心象的 変動,すなわち,心の揺れを考察することである. 要素として「会う方向」「会わない方向」「思慕」を示すことばを選び,段落ごとの 使用頻度を調べた.次に離散値系ウェーブレットの多重解像度解析を適用した.その結果, 源氏の場合第1パートと第2パートで「会う方向」と「思慕」に揺れが見られるが,第3 パートではともに低くなり,「会わない方向」が高くなる.「会わない方向」は第1 パートから第2パート,第3パートへ行くにしたがって徐々に高くなっていく傾向が見 られた.空蝉の場合,第1パートは「会う方向」,第2パートでは「会わない方向」が 顕著であり,自己の身意識によって感情を理性で抑えようとする.しかし第3パートに なると対象そのものへの「思慕」が感情の中心を占める. 源氏は感情の起伏が大きく,「空蝉物語」が源氏の青春の心の惑いと喪失感を痛感 させる物語であり,かつ空蝉に翻弄されていることが検証された.また,空蝉の身分意識 が源氏を翻弄し,源氏からのアプローチが思慕を募らせる根拠であったことも明らかになった.
著者
井波 真弓 齋藤 兆古 堀井 清之
出版者
The Visualization Society of Japan
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.229-230, 2007

Three elements "Will", "Fact" and "Judgment" in speech of the Japan-U.S. leaders were examined by the discrete wavelets multi-resolution analysis. As a result, it has been clarified that both curves of "Will" shows the similar tendency and these of "Judgment" shows the different tendency. In Policy Speech, Prime Minister Shinzo Abe tends to show his leadership as a new leader by expressing his "Will" and "Judgment". On the other hand, in State of the Union Address, President George Walker Bush emphasizes his agreements of legitimacy and demands an agreement of the present policy by quoting "Fact" repeatedly as the president accomplishing on second term.
著者
井波 真弓 齋藤 兆古 堀井 清之
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会論文集 (ISSN:13465260)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.25-32, 2010 (Released:2010-04-30)
参考文献数
17

本稿の目的は島崎藤村作『破戒』における封建的な旧社会と自己解放された新社会に生きる登場人物のそれぞれの感情の変化を検証することである. 要素として「世間」,「社会」,「世の中」の三つの語を選び,章ごとの使用頻度を新社会と旧社会とに分けて調べた.得られたデータへ離散値系ウェーブレット多重解像度解析を適用した. その結果,「世間」の頻出度合いの変化にはほぼ同様の傾向が見られ,双方ともに日本の古来から使用されている語「世間」と「世の中」に対する共通認識があることが確認された.新社会の登場人物が自己の考えを主張する場合「社会」が多くなるが,旧社会における「社会」の語は新社会に対抗したり,批判したりする時に多くなり,「世間」としての立場を主張するために「社会」を援用していることが示された.立場を主張する上で語の選択に大きな意味があることが明らかとなった.
著者
音川 英一 早野 誠治 齋藤 兆古 堀井 清之
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.24, no.Supplement1, pp.255-258, 2004-07-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

With the developments of modern high-speed computer, X-ray tomography and MRI are widely used as a deterministic tool of medical diagnosis. On the other side, EIT (Electrical Impedance Tomography) is now developing mainly for industrial use. Fundamental difference between them is that MRI or X-ray tomography needs not to handle the functional measured data, but EIT is based on the functional nature of the measurable data. Namely, EIT requires a solution of ill-posed system equations but MRI or X-ray tomography does not require the solution of such the ill-posed system equations. In the present paper, we propose one of the most reliable solution methodologies accompanying with EIT development.
著者
吉成 啓子 齋藤 兆古 岩崎 晴美 友末 亮三 松前 祐司 堀井 清之
出版者
白百合女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

スポーツ動作の解析は,高速度カメラ,筋電図,加速度計などを用いて行われてきた.しかし,その手法は比較研究が中心であり,「熟練者の動作」=「巧みな動作」という主観的・経験的議論にとどまることが多い.そこで本研究では,スポーツ動作としてテニスのサーブを選択し,画像の固有パターン認識手法を用いて,「巧みな動作」を科学的・客観的に判断することを試みた.その結果,テニスのサーブ・フォームにおける上級者と初級者の本質的相違が,画像の固有パターン認識手法によって抽出可能である,ということが明らかになった.方法,結果,考察の要点をまとめると次のようになる.「方法」スポーツ動作の中の不変量を,画像の固有パターン認識手法を用いて定量化することを検討した.被検者は,上級者として男子テニス選手1名,初級者としてテニス歴半年未満の男子1名の合計2名とした.各被検者は,縦状に緑,赤,青の3色に色分けされたウェアを着装し,最大努力のフラット・サーブを行った.サーブ動作を測方に設置したデジタルビデオカメラを用いて毎秒30コマで撮影した.「結果と考察」テニスのサーブにおいては,フォワード・スウィングの際の脊柱を中心とした身体の回旋速度を大きくするために,テイクバック時に上体をいったん後方に捻り,"タメ"を作ることが重要であるとされている.上級者初級者とも,赤・青・緑の色の部分のみを取り出した画像を解析した結果,3次元空間画素分布表示の場合は色の少ない部分はグラフ上に表示されず,こうした動きの本質的な相違のみを表示できるということが分かった.このことは,画像の固有パターン認識手法が,従来主観により論じられてきた「巧みな動作」を客観的に検討する手法として有効である,ということを示している.