著者
谷口 真吾 橋詰 隼人 山本 福壽
出版者
日本林學會
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.340-345, 2003 (Released:2011-03-05)

鳥取大学蒜山演習林のトチノキ林において、果実の成熟過程における落果時期と内部形態の解剖学的な観察をもとに、発育途中における未熟果実の落下原因を調べた。未熟果実は6月中旬から7月下旬までの間に全体の80-90%が落下した。未熟落果の形態として、「虫害」タイプ、「胚珠の発育不全」タイプ、「種子内組織の崩壊」タイプ、「胚の発育不全」タイプの四つが挙げられた。虫害による未熟落果は6月と7月下旬以降に多く発生した。6月の虫害は果肉摂食型幼虫によるもの、7月下旬以降の虫害は子葉摂食型幼虫によるものであった。「胚珠の発育不全」タイプの落果は主に6月にみられ、受粉・受精の失敗によって胚珠が種子に成長しなかったことが原因と考えられた。「種子内組織崩壊」タイプの落果は7月上旬以降にみられ、種子内の組織が死滅して内部が空洞化していた。「胚の発育不全」タイプの落果は7月下旬以降にみられ、胚の発育が途中で止まったものであった。トチノキの未熟落果の大部分を占める「胚珠の発育不全」と「種子内組織の崩壊」は、落下果実の内部形態から判断して、「胚珠の発育不全」タイプは受粉・受精の失敗が主要因であり、「種子内組織の崩壊」タイプは資源制限による発育中断が主要因である可能性が高いと考えられた。

言及状況

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編集者: X-enon147
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