著者
西谷 美乃理 森 理恵
出版者
京都府立大学
巻号頁・発行日
no.57, pp.33-41, 2005 (Released:2011-03-05)

陸軍被服本廠内の被服協会の機関誌『被服』と、上村六郎『戦時の本染』により、十五年戦争下における染色をめぐる状況を見た。その結果は次のようにまとめられる。植物染料によるほんぞめ「本染」(草木染)の振興は、第一に、化学染料の輸入の途絶と国内染料工場の化学兵器工場への転用とによる染料不足、第二に、本土空襲による迷彩色を身につける必要性の高まり、というふたつの要因から企図された。ところが一方、「本染」は、先に民芸関係者により、化学染料にはない美をもつものとして評価しようという動きが開始されていた。これが「本染」振興の第三の要因である。その普及に当たっては、染料不足の解消と迷彩色の獲得という差し迫った目的よりも、これは日本古来の美なのである、という美的精神的側面が強調される。「本染」(草木染)は戦時下の国粋意識と結びつき、戦後にはこの第三の要因によって、支持されることとなった。

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