- 著者
-
森 理恵
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, no.8, pp.543-554, 2019 (Released:2019-08-24)
- 参考文献数
- 42
本論文は, 日露戦争からアジア太平洋戦争期 (1904~1945) までの「慰問袋」募集・送付活動について, 数量の推移や仕組みの発達を明らかにすることを目的とし, 慰問袋の募集と送付に関する新聞記事, 新聞広告, 業界紙, 団体機関誌, 軍事後援団体の報告書等を収集し, 分析した. 慰問袋の数量の推移については, 日露戦争や日中戦争だけでなく, 東北九州災害や青島攻略, 関東大震災でも多数の慰問袋を送る活動がおこなわれており, 単線的に増加したわけではないことを明らかにした. 慰問袋の変遷は, 日露戦争時を発生期, 東北九州災害・第一次世界大戦から関東大震災までを発達・完成期, 「満洲事変」から日中戦争・太平洋戦争前期までを拡大・定着期, 太平洋戦争後期を衰退期とみなすことができた. 東北九州災害から関東大震災までの時期 (1914-1923) が, 慰問袋募集・送付活動の仕組みの成立にとっては重要な時期であることがわかった. 慰問袋募集・送付活動の仕組みは, 慰問袋の送り手は女性男性子ども大人を問わず個人であり, 取扱機関は婦人会・青年団など地域の団体や, 学校, 百貨店, 製薬・製菓などの会社, 新聞社であり, 手続き方法は上記の取扱機関に手製または購入した慰問袋を持ち込む, 店頭で購入と同時に送付を申し込む, 新聞社などに代金を寄付する, のいずれかであることが明らかになった.