著者
小泉 達治
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
巻号頁・発行日
no.11, pp.53-72, 2006 (Released:2011-03-05)

米国では1970年代後半から、エネルギー、環境問題そして余剰農産物問題への対応からとうもろこしを主原料とした燃料用エタノール生産およびガソリンヘの混合が実施されており、特に1990年の改正大気浄化法施行以降、燃料用エタノールの需要量および生産量は拡大した。最近では含酸素燃料として使用されていたMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)は環境汚染の可能性がカリフォルニア州等から指摘されたことにより、MTBEから同様の効果を有する燃料用エタノールヘの代替が促進されている。今後の燃料用エタノール需給動向に影響を及ぼす要因としては、国際原油価格動向、燃料用エタノールに関する補助措置の動向、原料作物であるとうもろこしの需給動向等があげられるが、最も影響を与える要因としてはMTBEの規制動向および2005年以降の新たな動きである各州における最低消費量基準であるESF(Ethanol State Floor)の導入が今後のエタノール需給動向を決定する上で極めて重要な要因である。今後、MTBEからの代替およびESFの導入州の増加に伴いエタノール用需要量が増加することが見込まれるが、生産量が停滞する場合は、米国は国内とうもろこし需要量増加に対応していくため、輸出量の削減を行う可能性がある。この世界最大のとうもろこし輸出国における輸出量の削減は国際とうもろこし需給にも影響を与える可能性もある。その場合はとうもろこし輸入量の95%を米国に依存しているわが国にも影響を与えることが考えられる。

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