著者
岡江 恭史
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.6, pp.23-49, 2004-03
被引用文献数
3

1960年代以降、アジア各国で設立・再編された農業金融制度は、低い資金回収率・高い取引費用等の問題を残した。これに対してベトナムにおいては、ドイモイ政策の一環として設立された農業銀行や貧民銀行といった金融機関の農民への貸付に際して、農民会等の大衆組織が仲介し、またこれらの組織のもとで共同債務グループが結成され、高い資金回収率と取引費用の削減をもたらした。しかし、これらの組織やグループの実態はこれまで明らかにされていない。本稿では、これらの組織やグループの実態を村落構造との関係に着目して明らかにし、良好なパフォーマンスを可能にした背景として集落の重要性を指摘する。筆者がベトナム紅河デルタ農村にて調査を行った結果、以下のことが判明した。銀行貸付を仲介する農民会は予算・人員の面で不充分でその活動も活発とはいえず、グループの共同債務も事実上機能していない。にもかかわらず銀行貸付が債務不履行も出さず良好なパフォーマンスを示しているのは、実質的に集落が貸付仲介を行っているからである。集落は村落内のあらゆる社会組織の基本単位であって、村民にとって最も身近な共同体である。それゆえ、財政的基盤がなくてもモニタリングを行うことは容易である。調査村においては、村落共同体の助けを借りつつ近代的な金融制度が農村部に着実に浸透しているといえる。
著者
小島 泰友
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

比較静学モデルによる価格伝達分析を行い,硬質小麦の政府売渡価格やふすまの市場動向,製粉・製パン業の非農業部門など,これらの外生変数による小麦製品の価格変化率に対する寄与率を計測し,小麦政府売渡制度の相対的影響度を明らかにした.高度経済成長期を終え,非農業部門からのコスト上昇圧力が緩和した1980年代半ば以降,小麦の政策価格は,食パン価格の変化に対して,それ以前よりも相対的に強い影響を与えている.1980年代後半以降の小麦価格の引き下げ期に,小麦粉価格の低下が不十分であった要因について,定量分析を行った.製粉大手企業は原料費削減による残余資金を原資に,製販統合・経営多角化を推進し,食品販売部門の強化を図っている.よって,硬質小麦の政府売渡価格の引き下げは,強力粉価格の低下に十分反映されていない.価格支持政策から直接支払政策への農政転換は,必ずしも消費者利益の増加につながるとは限らない.強力粉価格が低下した1980年代後半以降,食パン卸売価格が下方硬直的であった要因を推測的変動モデルで定量分析を行った.製パン大手企業の販路拡大競争と製パン小売業の台頭によって70年代後半,低価格戦略が取られたが,その後,企業合併等で市場集中度が高まると,価格は下方硬直的となった.食品製造業全体を上回る製パン業の人件費の伸びも影響した.70年代後半の市場競争性があれば,90年代末の価格水準は,約6〜12%低いと推定される.規模の経済性をもつ不完全競争下の食品産業を想定し,農業効率化と輸入関税削減が,農産物から加工食品への価格伝達性に対してどのような効果をもたらし,農業生産者と最終消費者にどのような影響を与えるのか,McCorristonらのモデルをもとに理論的考察を行った.農業効率化と関税削減をいかに進めるかだけでなく,加工食品市場の競争性をいかに高めるかという論点も,最終消費者だけでなく農業生産者の利益の確保のために,重要である.
著者
佐々木 宏樹
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では,行動経済学の知見に基づく新たな政策手法である「ナッジ(Nudge)」が,野菜の消費拡大に与える効果を「ランダム化比較実験(RCT)」により検証する。個人の野菜への支出額を把握する際は,日本が世界に先行するレシート買い取りアプリを用いた個人レベルの日々の購買データを利用する。レシートデータは店舗横断的に把握が可能である。このため,購買場所,時間帯などのより詳細なデータを把握できるうえ,モバイルアプリを通じて個人に対するナッジが可能となる。今回の実験を通じて,消費者の野菜の購買パターンを精細に分析しかつ健康な食の選択を促すために有効なフード・ナッジを検証することが可能となる。
著者
小泉 達治
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
巻号頁・発行日
no.28, pp.25-62, 2018 (Released:2018-10-18)

自動車用燃料として使用できるバイオ燃料は,化石由来燃料からの代替エネルギー利用によるエネルギー安全保障問題への対応,温室効果ガスの削減,農業・農村経済の活性化等の目的により,世界中で導入が進められている。本研究では米国,ブラジル,EU,インドネシア,マレーシアのバイオ燃料政策・市場構造を定性的に分析し,バイオ燃料が世界の食料需給及びフードセキュリティに与える影響についての考察を行った。世界のバイオ燃料生産量の増加率は鈍化しているものの,いまだ増加傾向は続いている。バイオ燃料の主原料は依然として農産物が大部分を占めているため,現段階でもバイオ燃料は世界の食料需給に影響を与えている状況にある。バイオ燃料による食料価格下支え効果は,2000年代半ば以降の世界の食料需給構造を大きく変えた要因の一つであると考えられる。今後も,世界のバイオ燃料需要量はほぼ横ばいで推移するものの,食料由来のバイオ燃料需要量が世界の食料需給に影響を与え続けていく見込みである。これは,今後も食料価格が下落しにくい構造が継続していくことを意味する。一方,農産物は農民にとって重要な所得源であるため,バイオ燃料生産を通じて,食料価格を「下支え」し,価格の暴落を防ぐことは,農民の所得安定・増加にもつながると考える。このため,バイオ燃料が世界のフードセキュリティにとってプラスとなるような取組を国際社会で進めていくことが今後,重要となる。
著者
足立 恭一郎
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.27-46, 2002-03

1993年2月を画期とする軍人政権から文民政権への移行に伴い、韓国農政はそれまでの単線的な規模拡大・生産コスト削減路線から親環境農業路線へと徐々に方向を転換しはじめた。親環境とは、環境への優しさを強調する韓国独自の表現であり、日本でいう有機栽培と特別栽培の双方が含まれる。 この農政パラダイムの転換を唱導したのは許信行氏、崔洋夫氏、金成勲氏という韓国を代表する3人の農業経済学者であった。許信行氏は金泳三大統領の下で韓国農政史上初の学者長官(在任期間:1993.2.26.~93.12.21.)に就任し、崔洋夫氏は学者秘書官として大統領府の初代農水産主席(1993.12.23.~98.2.24.)を金泳三政権の全期間に亘って務めた。そして、金成勲氏は金大中大統領の下で韓国農政史上2人目の学者長官(1998.3.3.~2000.8.7.)に就任し、持続農業(許氏)・環境農業(崔氏)・親環境農業(金氏)をそれぞれ「韓国農業の4つの進路」(許氏及び崔氏)或いは「韓国農業の生き残る道」(金氏)に位置づけて積極的に推進した。 1993年2月から2000年8月まで7年半、3人の農業経済学者が理論的裏付けを有するそれぞれの農政理念に基づいて主導した農政改革は奏功し、韓国の農政は今、その軸足を親環境農業路線に置くようになった。環境農業育成法の制定、親環境農業直接支払制度および水田農業直接支払制度の導入、親環境農産物認証制度の導入と同流通システムの整備などはその端的な事例である。大統領制をとる韓国では政権交代により農政自体も大きく変わるため、金泳三、金大中政権と続いた農政変革路線がいつまで続くか予断を許さないが、韓国農政の今後の展開に注目したい。
著者
井上 荘太朗
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
巻号頁・発行日
no.12, pp.65-84, 2006 (Released:2011-03-05)

さとうきび作は、沖縄県の経済振興のために必須の作目と政策的に位置づけられてきた。この背景には、沖縄県、特に離島部の経済がさとうきび作と製糖業に対して大きく依存しており、かつ代替的な作目が見出しがたいとする認識がある。しかし農家の高齢化に伴い、沖縄県のさとうきび作は縮小してきている。また、島ごとにみると、他の経済部門が小さい上に輸送条件が不利な遠隔離島地域にある平坦部の広い島(南北大東島や宮古島等)では、依存度は確かに高いが、こうした島を除くと、依存度はあまり高くない場合もあることが指摘される。このように各島での事情は異なるが、製糖工場の操業度が低下していることもあり、いずれの島でも、さとうきび生産の拡大を強く支援するために多様な施策がとられており、高い成果をあげている場合もある。しかし、国内の砂糖市場が縮小し、国内糖業の支持のための財政負担の効率性も厳しく問われている状況下においては、こうしたモノカルチャー的なさとうきび作の拡大に偏った政策を再検討することも必要かもしれない。さらには、今後、離島社会の振興をより持続的な基盤の上で進めるためには、各島の事情に応じて、農業と他の経済部門との連携を含んだ柔軟な施策を採用していくことが求められると考察される。
著者
井上 荘太朗
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.65-84, 2006-09

さとうきび作は、沖縄県の経済振興のために必須の作目と政策的に位置づけられてきた。この背景には、沖縄県、特に離島部の経済がさとうきび作と製糖業に対して大きく依存しており、かつ代替的な作目が見出しがたいとする認識がある。しかし農家の高齢化に伴い、沖縄県のさとうきび作は縮小してきている。また、島ごとにみると、他の経済部門が小さい上に輸送条件が不利な遠隔離島地域にある平坦部の広い島(南北大東島や宮古島等)では、依存度は確かに高いが、こうした島を除くと、依存度はあまり高くない場合もあることが指摘される。このように各島での事情は異なるが、製糖工場の操業度が低下していることもあり、いずれの島でも、さとうきび生産の拡大を強く支援するために多様な施策がとられており、高い成果をあげている場合もある。しかし、国内の砂糖市場が縮小し、国内糖業の支持のための財政負担の効率性も厳しく問われている状況下においては、こうしたモノカルチャー的なさとうきび作の拡大に偏った政策を再検討することも必要かもしれない。さらには、今後、離島社会の振興をより持続的な基盤の上で進めるためには、各島の事情に応じて、農業と他の経済部門との連携を含んだ柔軟な施策を採用していくことが求められると考察される。
著者
小泉 達治
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
巻号頁・発行日
no.11, pp.53-72, 2006 (Released:2011-03-05)

米国では1970年代後半から、エネルギー、環境問題そして余剰農産物問題への対応からとうもろこしを主原料とした燃料用エタノール生産およびガソリンヘの混合が実施されており、特に1990年の改正大気浄化法施行以降、燃料用エタノールの需要量および生産量は拡大した。最近では含酸素燃料として使用されていたMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)は環境汚染の可能性がカリフォルニア州等から指摘されたことにより、MTBEから同様の効果を有する燃料用エタノールヘの代替が促進されている。今後の燃料用エタノール需給動向に影響を及ぼす要因としては、国際原油価格動向、燃料用エタノールに関する補助措置の動向、原料作物であるとうもろこしの需給動向等があげられるが、最も影響を与える要因としてはMTBEの規制動向および2005年以降の新たな動きである各州における最低消費量基準であるESF(Ethanol State Floor)の導入が今後のエタノール需給動向を決定する上で極めて重要な要因である。今後、MTBEからの代替およびESFの導入州の増加に伴いエタノール用需要量が増加することが見込まれるが、生産量が停滞する場合は、米国は国内とうもろこし需要量増加に対応していくため、輸出量の削減を行う可能性がある。この世界最大のとうもろこし輸出国における輸出量の削減は国際とうもろこし需給にも影響を与える可能性もある。その場合はとうもろこし輸入量の95%を米国に依存しているわが国にも影響を与えることが考えられる。
著者
井上 荘太朗
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.65-84, 2006-09

さとうきび作は、沖縄県の経済振興のために必須の作目と政策的に位置づけられてきた。この背景には、沖縄県、特に離島部の経済がさとうきび作と製糖業に対して大きく依存しており、かつ代替的な作目が見出しがたいとする認識がある。しかし農家の高齢化に伴い、沖縄県のさとうきび作は縮小してきている。また、島ごとにみると、他の経済部門が小さい上に輸送条件が不利な遠隔離島地域にある平坦部の広い島(南北大東島や宮古島等)では、依存度は確かに高いが、こうした島を除くと、依存度はあまり高くない場合もあることが指摘される。このように各島での事情は異なるが、製糖工場の操業度が低下していることもあり、いずれの島でも、さとうきび生産の拡大を強く支援するために多様な施策がとられており、高い成果をあげている場合もある。しかし、国内の砂糖市場が縮小し、国内糖業の支持のための財政負担の効率性も厳しく問われている状況下においては、こうしたモノカルチャー的なさとうきび作の拡大に偏った政策を再検討することも必要かもしれない。さらには、今後、離島社会の振興をより持続的な基盤の上で進めるためには、各島の事情に応じて、農業と他の経済部門との連携を含んだ柔軟な施策を採用していくことが求められると考察される。
著者
足立 恭一郎
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.27-46, 2002-03
被引用文献数
2

1993年2月を画期とする軍人政権から文民政権への移行に伴い、韓国農政はそれまでの単線的な規模拡大・生産コスト削減路線から親環境農業路線へと徐々に方向を転換しはじめた。親環境とは、環境への優しさを強調する韓国独自の表現であり、日本でいう有機栽培と特別栽培の双方が含まれる。 この農政パラダイムの転換を唱導したのは許信行氏、崔洋夫氏、金成勲氏という韓国を代表する3人の農業経済学者であった。許信行氏は金泳三大統領の下で韓国農政史上初の学者長官(在任期間:1993.2.26.~93.12.21.)に就任し、崔洋夫氏は学者秘書官として大統領府の初代農水産主席(1993.12.23.~98.2.24.)を金泳三政権の全期間に亘って務めた。そして、金成勲氏は金大中大統領の下で韓国農政史上2人目の学者長官(1998.3.3.~2000.8.7.)に就任し、持続農業(許氏)・環境農業(崔氏)・親環境農業(金氏)をそれぞれ「韓国農業の4つの進路」(許氏及び崔氏)或いは「韓国農業の生き残る道」(金氏)に位置づけて積極的に推進した。 1993年2月から2000年8月まで7年半、3人の農業経済学者が理論的裏付けを有するそれぞれの農政理念に基づいて主導した農政改革は奏功し、韓国の農政は今、その軸足を親環境農業路線に置くようになった。環境農業育成法の制定、親環境農業直接支払制度および水田農業直接支払制度の導入、親環境農産物認証制度の導入と同流通システムの整備などはその端的な事例である。大統領制をとる韓国では政権交代により農政自体も大きく変わるため、金泳三、金大中政権と続いた農政変革路線がいつまで続くか予断を許さないが、韓国農政の今後の展開に注目したい。
著者
草野 拓司
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.21, pp.71-90, 2014-02

本稿は,インド農村金融の中心的存在である単位信用農協が,政府の債務帳消し政策により金融規律の欠如した借り手を相手にして低返済率を強いられている現状を踏まえ,多大な費用を要さずに高返済率を達成するための方法を明らかにしようとしたものである。このために,近隣の製糖協同組合との協同組合間連携により,多大な費用をかけずに高返済率を達成している一単位信用農協を事例とし,実証的に分析を行った。その結果,連携先である製糖協同組合が事例単位信用農協に対して,組合員の甘蔗出荷額から天引きして返済することに加え,組合員の情報を提供し情報の非対称性を緩和させることが,高返済率達成の主要因であることが明らかになった。ただし,そのような天引きが強制される融資契約に組合員が参加するためのインセンティブが必要であり,連携のメカニズムの中にそれをもたらす機能が内在されていることが重要であることもわかった。また,協同組合間連携を行う場合,特に,追加的な事務コストが発生するなど,製糖協同組合にデメリットが生じるため,なぜそのようなシステムが長年にわたって維持されてきたのかという疑問が生じる。そこで,製糖協同組合がこのシステムに参加するインセンティブについての分析を試みた。その結果,製糖協同組合の場合,組合員が農業資金を獲得して安定した甘蔗生産を行うことが製糖協同組合の経営を安定させるために不可欠であるため,組合員の農業資金獲得が製糖協同組合にとってのメリットとなり,デメリットを上回ることが,参加のインセンティブになっていることが明らかになった。
著者
鈴村 源太郎
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.15, pp.41-59, 2009-06
被引用文献数
2

わが国の農村の中には、修学旅行などを通じた小中学生等の受け入れにより、地域活性化に役立てている地域がある。関連して、国では、小学生の農林漁業宿泊体験を進める「子ども農山漁村交流プロジェクト」事業が進められている。近年の修学旅行では「体験学習」の位置づけが高まっており、中でも関心の高い民泊を伴う「農林漁業体験」は、教育的配慮から「ホンモノ」を求める動きが強い。長野県飯田市と福島県喜多方市における事例分析によれば、受入農家や地域への波及効果として、様々な効果が確認されている。経済効果は、宿泊を含む体験料金収入が最大で年約50万円程度になっているほか、作業効率が向上した例もある。非経済効果としては、子供との共感から生まれる感動や手紙のやりとりから元気を得た農家が多く、地域の連帯感や活気などの副次的効果も確認されている。とはいえ、体験教育旅行は、時期的な集中や家族の協力、コストの見直しなど課題も多い。受入は小規模複合経営が中心であるが、現状では農業生産をしっかり行った上で、労働力の空き時間の範囲での実施を前提に取り組むのが望ましいと考えられる。「ホンモノ」の体験を提供するためにも、受入農家の農業生産を継統的に支える仕組みづくりが同時に必要とされる。本稿は、小中学生を対象とした体験教育旅行が、農業経営あるいは地域コーディネート組織に与える影響側面を実態的に明らかにするとともに、農村地域への経済的・社会的波及効果や今後の展望等について検討することを目的としている。
著者
勝又 健太郎
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.6, pp.51-81, 2004-03

WTO体制下における諸外国のセーフガード(SG)の発動事例について、農産物に関する事例に重点をおいて、発動状況、発動条件の運用実態及びWTOの紛争処理の過程でパネル及び上級委員会により示された発動条件の運用に関する国際規律を整理・分析した。SG協定発効前後で発動件数は、減少から増加に転じた。全体的に農産物の事例の方が鉱工業製品の事例に比べて、発動手段についてはより数量管理的(輸入数量制限、関税割当)、発動期間についてはより長期の措置となっている。農産物に関する事例についての発動条件(輸入増加及び損害指標の定量的評価等)の運用実態については、輸入が減少している事例があり、また、全ての損害指標の評価結果が低下している訳ではなく、評価を定性的・間接的・代替的に行った事例がある。農産物に関する事例の中では、韓国の脱脂粉乳調整品、米国の小麦グルテン及びラム肉、チリの小麦・小麦粉及び食用植物油の輸入に関する措置が紛争案件となり、パネル及び上級委員会で検討されたが、全てSG協定違反とされた。SG協定の規定に対して厳密な解釈が行われ、各国の事例の実態をパネル及び上級委員会が示した国際規律に照らして判断すると、発動条件を完全に満たすことは困難である。発動の前提として、産品の同種性・直接的競合性の解釈や損害指標の評価手法と因果関係の分析手法の確立が不可欠である。
著者
勝又 健太郎
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.6, pp.51-81, 2004-03

WTO体制下における諸外国のセーフガード(SG)の発動事例について、農産物に関する事例に重点をおいて、発動状況、発動条件の運用実態及びWTOの紛争処理の過程でパネル及び上級委員会により示された発動条件の運用に関する国際規律を整理・分析した。SG協定発効前後で発動件数は、減少から増加に転じた。全体的に農産物の事例の方が鉱工業製品の事例に比べて、発動手段についてはより数量管理的(輸入数量制限、関税割当)、発動期間についてはより長期の措置となっている。農産物に関する事例についての発動条件(輸入増加及び損害指標の定量的評価等)の運用実態については、輸入が減少している事例があり、また、全ての損害指標の評価結果が低下している訳ではなく、評価を定性的・間接的・代替的に行った事例がある。農産物に関する事例の中では、韓国の脱脂粉乳調整品、米国の小麦グルテン及びラム肉、チリの小麦・小麦粉及び食用植物油の輸入に関する措置が紛争案件となり、パネル及び上級委員会で検討されたが、全てSG協定違反とされた。SG協定の規定に対して厳密な解釈が行われ、各国の事例の実態をパネル及び上級委員会が示した国際規律に照らして判断すると、発動条件を完全に満たすことは困難である。発動の前提として、産品の同種性・直接的競合性の解釈や損害指標の評価手法と因果関係の分析手法の確立が不可欠である。
著者
相川 良彦
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.27-51, 2003-10

山形県長瀞村の戦後の農村演劇運動は宮澤賢治の芸術思想を起源とする。それは資本主義により独占され偏向された近代芸術を、地域庶民の手に取り戻し、生活に根ざした生命力を吹き込むことによって蘇らせようと主張していた。この芸術思想は、戦前において、その教え子・松田甚二郎による演劇活動を核とした村づくり運動として山形・最上で実践された。戦後において演劇は、生活記録運動のリーダー・国分一太郎の教え子と松田の演劇活動に触発された青年たちが出会って、サークル活動として蘇った。青年サークルや青年団がその活動基盤であった。それら諸組織にとって演劇は、成員の連帯強化には役立つが、資金と労働の負担が障害だった。そのため演劇の担い手は組織の連帯強化と資金難との衝突によりしばしば入れ替わった。演劇内容としては、農村演劇はテーマの追究と娯楽性との二兎を追って展開してきた。だが、青年諸組織の解散と共に、それらを活動基盤とした農村演劇も消滅した。本論は、民衆芸術としての演劇思想は誰により唱えられ、どのような内容のものであったか、その思想は如何なる社会条件と結合し演劇へと具体化されたか、演劇活動に栄枯盛衰をもたらした社会経済的条件とは何であったか、を主として演劇運動の担い手たちの証言により明らかにするものである。
著者
須田 文明
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

我が国と同様、フランスにおいても、諸外国からの安価な農産物の輸入により国内生産が低迷している。例えば生鮮果実や野菜では、スペインやモロッコなどから安価な産品が輸入されている。こうした背景において、フランスでは育種研究を通じて、自国産品の競争力を高めるべく、嗜好的品質や地域的品質(地域特産品など)をもった産品の開発が進められている。本研究はフランスにおける遺伝資源を活用した育種研究を通じて、農産物の高付加価値化が、具体的にどのようになされているかを明らかにした。
著者
清水 純一 大江 徹雄 坂内 久
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

米国については、農産物貿易は全般的にNAFTA域内貿易と対アジア、特に対中国貿易、に大きく依存している実態が明らかになった。食肉に関しては、日本を最終消費地とするNAFTA域内の分業体制が構築されている点が明らかになった。ブラジルでは、世界最大級の食肉企業2社に注目して分析した。両企業とも、近年国外で活発にM&Aを行い、短期間で多国籍食肉企業に変貌した。現時点でブラジルにおいては、米国のように、食肉に関する産業内貿易はほとんど認められない。しかし、我々の研究からは国外での加工・輸出拠点の多元化が進展すれば、ブラジルにおいても食肉の産業内貿易が増加する可能性が高いことが明らかになった。
著者
中田 哲也
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.5, pp.45-59, 2003-12
被引用文献数
7

フード・マイレージとは、輸入相手国別の食料の輸入量に当該国からわが国までの輸送距離を乗じ、その数値を累積することにより求められるもので、単位は・km(トン・キロメートル)で表示される。2001年におけるわが国の食料輸入総量は合計で約5800万で、国毎の輸入量に輸送距離を乗じ累積したフード・マイレージは約9000億・kmとなる。なお、この水準はわが国国内における1年間の総貨物輸送量の約1.6倍に相当する。諸外国の数値をわが国と比較すると、韓国およびアメリカは3-4割、イギリスおよびドイツは約2割、フランスは1割強となっている。人口1人当たりでみると、韓国はわが国に近い水準であるが、イギリスは約半分、フランスおよびドイツは約3割、米国は1割台の水準である。また、わが国は、特定の品目(穀物、油糧種子等)や輸入相手国(米国等)に偏っているという特徴がある。さらに、輸入食料の輸送に係るCO2排出量を試算すると、国内における食料輸送に伴うよりも相当大きな負荷を環境に及ぼしていることが推測される。
著者
中田 哲也
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.5, pp.45-59, 2003-12
被引用文献数
7

フード・マイレージとは、輸入相手国別の食料の輸入量に当該国からわが国までの輸送距離を乗じ、その数値を累積することにより求められるもので、単位は・km(トン・キロメートル)で表示される。2001年におけるわが国の食料輸入総量は合計で約5800万で、国毎の輸入量に輸送距離を乗じ累積したフード・マイレージは約9000億・kmとなる。なお、この水準はわが国国内における1年間の総貨物輸送量の約1.6倍に相当する。諸外国の数値をわが国と比較すると、韓国およびアメリカは3-4割、イギリスおよびドイツは約2割、フランスは1割強となっている。人口1人当たりでみると、韓国はわが国に近い水準であるが、イギリスは約半分、フランスおよびドイツは約3割、米国は1割台の水準である。また、わが国は、特定の品目(穀物、油糧種子等)や輸入相手国(米国等)に偏っているという特徴がある。さらに、輸入食料の輸送に係るCO2排出量を試算すると、国内における食料輸送に伴うよりも相当大きな負荷を環境に及ぼしていることが推測される。