著者
伊藤 太一
出版者
日本森林学会
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.125-135, 2009 (Released:2011-04-05)

近年自然地域におけるレクリエーションのための入域や施設利用、インタープリテーションなどのサービスに対する費用負担が国際的課題になっているが、日本では山岳トイレなど特定施設に限定される。ところが、江戸時代の富士山においては多様な有料化が展開し、登山道などの管理だけでなく地域経済にも貢献し、環境教育的活動の有無は不明であるが、環境負荷は今日より遙かに少なくエコツーリズムとしての条件に合致する。そこで本論ではレクリエーション管理の視点から、登山道と登山者の管理およびその費用負担を軸に史料を分析し、以下の点を明らかにした。1)六つの登山集落が4本の登山道を管理しただけでなく、16世紀末から江戸などで勧誘活動から始まる登山者管理を展開することによって、19世紀初頭には庶民の登山ブームをもたらした。2)当初登山者は山内各所でまちまちの山役銭を請求されたが、しだいに登山集落で定額一括払いし、山中で渡す切手を受け取る方式になった。さらに、全登山口での役銭統一の動きや割引制度もみられた。3)同様に、登山者に対する接客ルールがしだいに形成され、サービス向上が図られた。4)一方で、大宮が聖域として管理する山頂部では個別に山役銭が徴収されるという逆行現象もみられた。

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