著者
小泉 達治
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
巻号頁・発行日
no.28, pp.25-62, 2018 (Released:2018-10-18)

自動車用燃料として使用できるバイオ燃料は,化石由来燃料からの代替エネルギー利用によるエネルギー安全保障問題への対応,温室効果ガスの削減,農業・農村経済の活性化等の目的により,世界中で導入が進められている。本研究では米国,ブラジル,EU,インドネシア,マレーシアのバイオ燃料政策・市場構造を定性的に分析し,バイオ燃料が世界の食料需給及びフードセキュリティに与える影響についての考察を行った。世界のバイオ燃料生産量の増加率は鈍化しているものの,いまだ増加傾向は続いている。バイオ燃料の主原料は依然として農産物が大部分を占めているため,現段階でもバイオ燃料は世界の食料需給に影響を与えている状況にある。バイオ燃料による食料価格下支え効果は,2000年代半ば以降の世界の食料需給構造を大きく変えた要因の一つであると考えられる。今後も,世界のバイオ燃料需要量はほぼ横ばいで推移するものの,食料由来のバイオ燃料需要量が世界の食料需給に影響を与え続けていく見込みである。これは,今後も食料価格が下落しにくい構造が継続していくことを意味する。一方,農産物は農民にとって重要な所得源であるため,バイオ燃料生産を通じて,食料価格を「下支え」し,価格の暴落を防ぐことは,農民の所得安定・増加にもつながると考える。このため,バイオ燃料が世界のフードセキュリティにとってプラスとなるような取組を国際社会で進めていくことが今後,重要となる。

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