著者
長澤 栄史 中西 玉子
出版者
日本きのこセンター菌蕈研究所
巻号頁・発行日
no.47, pp.1-6, 2017 (Released:2019-04-11)

京都府船井郡京丹波町のスギ林内で採集された標本(4月~5月にかけて林内の落枝および腐植上に発生)に基づいて,Plectania melastoma(Sowerby:Fr.)Fuckel(チャワンタケ目,クロチャワンタケ科)の日本における発生を報告した。本菌は,小型(径1-1.5cm位)でお椀状の,比較的丈夫な肉質の子嚢盤を落枝および腐植上に群生するが,子実層面が黒色であるのに対して子嚢盤の外表面が鮮やかな赤橙色~赤褐色を帯び,粉状を呈するのを著しい特徴とする。また,紡錘状楕円形の比較的大きな胞子(19.2-25.8×9.6-12.6μm,長さ/幅値(Q)=1.8-2.4)をもち,子嚢盤外表面の菌糸をKOH水溶液で処理するとワイン色の色素を溶出する特徴をもつ。日本では外観的特徴におい類似するKorfiella karnika D. C. Pant and V. P. Tewari(コフキクロチャワンタケ)と混同され易いが,同菌は子嚢盤が1側面で基部付近まで裂けることや竹の古い切り株に発生することなどで区別される。P. melastomaはPlectania属の基準種で,文献によれば世界,主に北半球に広く分布するが,発生はまれで局地的のようである。日本においては従来本学名における報告はないが,アメリカの北太平洋探検調査隊(1853-1856)によって日本(徳之島、1855年4月30日,根上)で採集され,英国のM. J. Berkeley and M. A. Curtisによって1860年に新種記載されたPeziza japonica Berk. and M. A. Cutis(=Plectania japonica(Berk. and M. A. Cutis)Sacc.)は,そのタイプを調査したPfister(1997)によれば,P. melastomaと同一種であるといわれている。本種にはまだ和名が無いので新たにアカサビクロチャワンタケと命名した。

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 1 favorites)

長澤先生の論文(https://t.co/NnWy06tbQV)で使用された標本や地衣内生菌(https://t.co/56UCy8ls4v)として分離された日本産アカサビクロチャワンタケも系統解析されているが、Plectania melastomaと同定することに矛盾は無いようだ。

収集済み URL リスト