著者
尾形 凡生 蓮川 博之 塩崎 修志 堀内 昭作 河瀬 憲次 岩垣 功 奥田 均
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.245-253, 1996-09-15
被引用文献数
3 10

トリアゾール系ジベレリン(GA)生合成阻害物質によるウンシュウミカンの着花促進効果を生理的に説明するため,栄養器官内のGA<SUB>1</SUB>,GA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性の季節的消長ならびにパクロブトラゾール処理および収穫時期がウンシュウミカンの内生GA活性に及ほす影響について調査した.<BR>1,発育枝の葉中におけるGA<SUB>1</SUB>活性は,7月26日から9月26日にかけて高まり,翌年の1月28日にかけて減少した後,3月24日には再び高くなった.GA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性は,これとはほぼ逆の変化を示し,9月26日に最も低く,GA<SUB>20</SUB>では11月29日にGA<SUB>19</SUB>様物質では1月28日に最も高くなった.腋芽中の各GAの動態は葉とほぼ一致した.<BR>2,2月1日にパクロブトラゾール1,000ppm溶液の葉面散布を行ったところ,着花数が増加するとともに,3,4月における葉中のGA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性が低下した.しかし,GA<SUB>1</SUB>活性には影響が認められなかった.<BR>3,ウンシュウミカン成木に対して,10月中旬に果実を全収穫する早採り区と,その2か月後に収穫する晩採り区を設けたところ,早採り区の方が晩採り区に比べて,翌春の着花量が多かった.処理樹の内生GA活性は,早採り区の11月末および1月末におけるGA<SUB>20</SUB>様活性が晩採り区に比べ低くなった.<BR>以上の結果より,パクロブトラゾール処理は,活性型GAではなくその前駆物質の含量を低下させるが,これは着花数の多い早期収穫樹の内生GAの反応と一致しており,パクロブトラゾールの着花促進効果を裏付けるものと考えられる.

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