著者
中尾 義則 平 知明 堀内 昭作 河瀬 憲次 向井 康比己
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.275-280, 2005-07-15
被引用文献数
1

イチョウは雌雄異株であるが, 現在, 雌雄の判別は生殖器官の観察によるしかない.そこで, 染色体における雌雄の違いについて調査した.染色体数は雌雄ともに24本(12対)であった.付随体を持つ染色体の数は, 雄株と雌株それぞれ3本と4本であった.これら付随体の2本はもっとも大きな中部動原体型染色体の短腕にあり, その他の雄株の1本と雌株の2本は次中部動原体型染色体の長腕にあった.CMA染色の結果, 雌雄ともに2本のもっとも大きな中部動原体型染色体の短腕と2本の次中部動原体型染色体の長腕のそれぞれの二次狭窄部に, 合計4か所の黄色いバンドが認められた.5S rDNAと26S-5.8S-18S rDNAをプローブとしたFISH解析で両領域ともに二次狭窄部に位置し, 雌雄間に違いはなかった.また, これらの位置はCMAバンドと同様の場所に検出された.したがって, イチョウの雌雄性の判別は付随体の数によって判別できるが, 5S rDNAと26S-5.8S-18S rDNAをプローブとしたFISHシグナルやCMA染色では判別できないことが明らかとなった.
著者
尾形 凡生 植田 栄仁 塩崎 修志 堀内 昭作 河瀬 憲次
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.251-259, 1995-09-15
被引用文献数
3 10

数種類のジベレリン生合成阻害物質がウンシュウミカンの着花促進に及ぼす効果について調査した.<BR>1. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-P, プロヘキサジオン-CaおよびCCCを秋期 (1986年10月末~12月末) に3回散布したところ, パクロブトラゾールおよびウニコナゾールーP処理が翌春の着花数を有意に増加させた.<BR>2. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-P, プロヘキサジオン-CaおよびGA<SUB>3</SUB>を冬期 (1992年12月19日~1993年3月10日) に散布処理した. パクロブトラゾールでは, 1月10日および1月30日, ウニコナゾール-Pでは1月30日, プロヘキサジオン-Caでは, 12月20日~1月30日の処理によって有意な花数増加が得られた. GA3は各処理時期とも着花を著しく抑制し, とくに1月10日処理における着花抑制効果が高かった.<BR>3. 1993年1月30日にパクロブトラゾール, ウニコナゾール-Pおよびプロヘキサジオン-Caの100,300,1,000および3,000ppm溶液を散布したところ,パクロブトラゾールでは100~1,000ppm, ウニコナゾール-Pでは100ppm, プロヘキサジオン-Caでは300~1,000ppm処理で花数の増加効果が認められたが, このうちパクロブトラゾールの100ppm処理区では着蕾後の落花 (果) が発生した.<BR>4. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-Pおよびプロヘキサジオン-Caの1,000ppm溶液を1993年1月10日~2月20日に1~3回散布したところ, いずれの薬剤でも3回処理が最も効果的で, 1,2回処理でも花数は増加する傾向にあった.<BR>
著者
野田 勝二 奥田 均 木原 武士 岩垣 功 河瀬 憲次
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.78-82, 2001-01-15
被引用文献数
3 11 5

極早生ウンシュウ'山川早生'を7品種の台木に接ぎ, 1994年(5年生)&acd;1998年(9年生)に生育および果実品質を調査した.樹の生育は, シイクヮシャー, ラングプァーライム, 'シトロメロ'およびボルカメリアナが'ヒリュウ', 'ルビドー'およびカラタチに比べ優れていた.収量はカラタチ系台木で少なく'シトロメロ'台が最も多かった.果汁の糖度はヒリュウ台が'シトロメロ'以外の強勢台木より高かった.酸度はシイクヮシャー台がボルカメリアナ台より高かった.カラタチ系は果実品質が優れていたが, 樹勢が弱く収量も劣っていた.解体調査の結果, 地上部, 地下部および全体重は'シトロメロ', カラタチ, 'ヒリュウ'の順に大きかった.樹勢の強い'シトロメロ'では樹勢の弱いヒリュウと比べ地上部への乾物の分配率が高く, T-R率も高かった.以上の結果から, 'シトロメロ'はウンシュウミカンの極早生系統において, カラタチ台に代わる強勢台木として利用できることが分かった.
著者
尾形 凡生 蓮川 博之 塩崎 修志 堀内 昭作 河瀬 憲次 岩垣 功 奥田 均
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.245-253, 1996-09-15
被引用文献数
3 10

トリアゾール系ジベレリン(GA)生合成阻害物質によるウンシュウミカンの着花促進効果を生理的に説明するため,栄養器官内のGA<SUB>1</SUB>,GA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性の季節的消長ならびにパクロブトラゾール処理および収穫時期がウンシュウミカンの内生GA活性に及ほす影響について調査した.<BR>1,発育枝の葉中におけるGA<SUB>1</SUB>活性は,7月26日から9月26日にかけて高まり,翌年の1月28日にかけて減少した後,3月24日には再び高くなった.GA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性は,これとはほぼ逆の変化を示し,9月26日に最も低く,GA<SUB>20</SUB>では11月29日にGA<SUB>19</SUB>様物質では1月28日に最も高くなった.腋芽中の各GAの動態は葉とほぼ一致した.<BR>2,2月1日にパクロブトラゾール1,000ppm溶液の葉面散布を行ったところ,着花数が増加するとともに,3,4月における葉中のGA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性が低下した.しかし,GA<SUB>1</SUB>活性には影響が認められなかった.<BR>3,ウンシュウミカン成木に対して,10月中旬に果実を全収穫する早採り区と,その2か月後に収穫する晩採り区を設けたところ,早採り区の方が晩採り区に比べて,翌春の着花量が多かった.処理樹の内生GA活性は,早採り区の11月末および1月末におけるGA<SUB>20</SUB>様活性が晩採り区に比べ低くなった.<BR>以上の結果より,パクロブトラゾール処理は,活性型GAではなくその前駆物質の含量を低下させるが,これは着花数の多い早期収穫樹の内生GAの反応と一致しており,パクロブトラゾールの着花促進効果を裏付けるものと考えられる.