著者
東川 健
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.407-415, 2002-10-20

本稿では, 言語・コミュニケーション訓練のなかで用いたコミュニケーションボード・ブックを, 主にコミュニケーション機能の観点から分析した.症例は, 就学前の文字未学習の脳性麻痺 (車椅子使用) と知的障害を伴う3症例である.訓練開始時の3症例の言語理解面は1歳後半レベルだが, 表現面は有意味語がないか, あっても数語であった. (1) ユーザーはコミュニケーションボード・ブックと身ぶりを並行して, 相補的に用いていた. (2) ユーザーのコミュニケーション態度によって, コミュニケーションボード・ブックを要求機能主体に用いたほうがよい場合と要求機能から報告機能に広げたほうがよい場合に分かれた. (3) コミュニケーション意欲が低く, 変化への抵抗を示す症例には, 写真を受信に用いることが有効だった. (4) コミュニケーション態度の良好な2人のユーザーは, 過去の事象を想起するリマインダーとしてコミュニケーションブックを用いていた.このリマインダーとしての機能は, 過去の事象の報告を促すために有効な方法であることが示唆された.

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