著者
佐竹 恒夫 飯塚 直美 伊藤 淳子 東川 健
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.354-373, 1993-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
32

音声記号の受信 (理解) 面に比し発信 (表現) 面に極端な遅れがみられ, 国リハ式〈S-S法〉言語発達遅滞検査で症状分類B群 (音声発信困難) と分類された, 自閉症を伴う精神発達遅滞児4症例の発信行動の習得経過を, 発信行動の習得過程を分析するため作成した発信行動習得モデルを用いて分析した.その結果, B群のサブタイプa (文字・身振り記号・音声模倣による訓練が有効) の中に, コミュニケーション態度は不良 (自閉症) で, 音声発信を習得する過程が, (1) 初期的および事物を表す身振り, (2) 口腔器官運動や単音・単音節などの模倣および自発発信, (3) 文字を補助とする異音節結合, (4) 音声模倣による異音節結合, 自力での音声発信が日常的に可能となる, 以上のような共通する経過を示す下位群が設定できることを示した.さらに, 音声発信困難をきたす関連要因, 訓練プログラムにおける文字と身振り記号の意義などについて検討した.
著者
東川 健
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.407-415, 2002-10-20

本稿では, 言語・コミュニケーション訓練のなかで用いたコミュニケーションボード・ブックを, 主にコミュニケーション機能の観点から分析した.症例は, 就学前の文字未学習の脳性麻痺 (車椅子使用) と知的障害を伴う3症例である.訓練開始時の3症例の言語理解面は1歳後半レベルだが, 表現面は有意味語がないか, あっても数語であった. (1) ユーザーはコミュニケーションボード・ブックと身ぶりを並行して, 相補的に用いていた. (2) ユーザーのコミュニケーション態度によって, コミュニケーションボード・ブックを要求機能主体に用いたほうがよい場合と要求機能から報告機能に広げたほうがよい場合に分かれた. (3) コミュニケーション意欲が低く, 変化への抵抗を示す症例には, 写真を受信に用いることが有効だった. (4) コミュニケーション態度の良好な2人のユーザーは, 過去の事象を想起するリマインダーとしてコミュニケーションブックを用いていた.このリマインダーとしての機能は, 過去の事象の報告を促すために有効な方法であることが示唆された.