- 著者
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高橋 英和
- 出版者
- Japan Prosthodontic Society
- 雑誌
- 日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.3, pp.474-483, 2003-06-10
- 被引用文献数
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2
8
義歯安定剤には, 義歯粘着材と呼ぶべき粘着性の強い製品群と, 義歯床と口腔粘膜の間隙を補填して, 適合性を改善することで吸着性を向上させる家庭用裏装材 (ホームリライナー) の製品群に分類できる. 義歯粘着材では, さらに製品形状により粉末タイプ, クリームタイプ, テープタイプに分類できる. 義歯粘着材の主要成分は, 天然ゴムもしくは水溶性高分子であり, 口腔内や義歯の水分を吸収して膨潤し, 粘着性の高い液体となり, 義歯の維持力を増加させる. それに対しホームリライナーの主成分はポリ酢酸ビニル樹脂であり, 義歯と粘膜面の間隙を閉鎖することで維持力を発揮させる. 使用時にゴム弾性を示すのでクッションタイプとも呼ばれる. 義歯安定剤の接合力を測定したところ, 義歯粘着材は被着材の種類にかかわらずある程度の接合力を発揮するが, ホームリライナーはアクリル板でのみで大きな接合力を発揮する. また, 義歯安定剤には厚みがあるため, 咬合関係を誤った位置に導くことが懸念される. 実際にこれらを口腔内で使用したところ, 義歯粘着材は義歯の吸着を改善するが, 粘膜面からの除去が難しく, 不潔になりやすい. ホームリライナーではあまり義歯の吸着を改善しなかった. このように, 義歯安定剤は義歯粘着材とホームリライナーで大きく性質が異なり, 区別して考える必要がある.