著者
志田 修 西村 明
出版者
水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:03889149)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.232-238, 2002-11-30
被引用文献数
8

Miyakeは、春季の襟裳岬以東の北海道東部太平洋沿岸(道東海域)に分布する0歳魚のAbundance Indexが、VPAによって推定された太平洋系群の0歳魚の資源尾数と同様の年変動を示すことを観察している。また、近年の調査研究においても道東海域は、太平洋系群の幼魚および未成魚にとって重要な育成場であることが示されつつある。しかし、この道東海域における0歳魚の初期生活史については、産卵場との関連を含めてほとんど知見が得られていない。太平洋系群の主産卵場は噴火湾周辺海域と考えられている(Tsuji、1989)が、道東海域にも小規模な産卵場の存在が報告されており、春季には浮游期のスケトウダラ稚魚も採集されている。さらに志田は、秋期の道東海域に分布する0歳魚の尾叉長組成を調べ、孵化時期の異なる2群が存在する可能性を指摘している。従って、道東海域に分布する0歳魚がどの産卵場に由来するものなのかは、0歳魚の動態を明らかにする上でも、また太平洋系群の資源構造を明らかにする上でも解明されるべき重要な課題として残されている。近年、耳石内部に日周的に形成される微細な輪紋構造(日周輪)を利用して、仔稚魚期から底層生活移行後の0歳魚の孵化時期や産卵期の推定が行われており、ベーリング海やアラスカ湾においては、推定された孵化日組成と産卵期から、幼魚と産卵場の関係が論じられている。噴火湾周辺海域の産卵盛期は1月から2月であるが、道東海域はこれより遅く、3月であることが報告されている。産卵時期の違いは孵化日組成に反映すると推測されることから、この産卵期の違いを利用して0歳魚と産卵場の関係を検討することができる。そこで本研究では、1996年から1998年秋に道東海域において採集されたスケトウダラ0歳魚の耳石日周輪を計数して、その孵化日組成を調べ、産卵場との関連を検討した。

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