著者
本田 聡 志田 修 山村 織生
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.39-47, 2003-08-26
被引用文献数
3

スケトウダラ太平洋系群は,親潮および沿岸親潮の影響が及ぶ北海道〜東北太平洋岸の陸棚および陸棚斜面域に分布する重要漁獲対象資源である.主要な産卵場は冬季の噴火湾口部周辺海域に形成される.春季に孵化した着底前0歳魚の多くは日高湾のごく沿岸域に沿って東進し,秋季までに0歳魚の成育場と考えられている道東海域に到達する.この移動は春〜夏にかけての動物プランクトン豊度の移動と一致する.成熟までを主に道東陸棚域で過ごした未成魚は,3〜5歳の冬に初回の成熟を迎え,噴火湾口部へ産卵回遊する.産卵後の成魚は再び道東海域へ移動し,摂餌を行う.以後,成魚は夏の索餌期には道東,冬の産卵期には噴火湾口部へと,襟裳岬を挟んでの季節回遊を繰り返す.本資源は,北海道太平洋岸に隣り合って位置する二つの異なる海域,噴火湾口部周辺海域および道東海域の特性をそれぞれ有効に活かす生活史を持つに至ったと考えられる.
著者
西本 卓也 志田 修利 小林 哲則 白井 克彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.2176-2183, 1996-12-25
被引用文献数
32

マルチモーダルインタフェースの枠組みの中で音声入力がどのようにインタフェースの改善に貢献し得るかを検討し,そこで得た知見を生かしたマルチモーダル作図システムS-tgifを作成・評価した.システムの作成にあたっては,インタフェースの原則論に従って音声の特長である操作性および手順連想容易性を生かし,欠点である状態理解容易性,頑健性を他で補うよう努めた.評価実験の結果,システムの利用を開始してまもない時期あるいは一時利用を中断した後などにおいては特に音声の利用効果が高く,課題の完了までに要する時間を約80%に減少できた.ユーザがシステムに熟練すると音声の利用の客観的効果は薄れるが,特定のコマンドでは音声の利用率が90%を超え,また主観評価の結果でも高い評価を得るなど,音声入力はユーザから支持された.このように,インタフェースの原則論に従って音声の効果的利用を考慮することにより,有用なインタフェースを構築できることが示された.
著者
志田 修 西村 明
出版者
水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:03889149)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.232-238, 2002-11-30
被引用文献数
8

Miyakeは、春季の襟裳岬以東の北海道東部太平洋沿岸(道東海域)に分布する0歳魚のAbundance Indexが、VPAによって推定された太平洋系群の0歳魚の資源尾数と同様の年変動を示すことを観察している。また、近年の調査研究においても道東海域は、太平洋系群の幼魚および未成魚にとって重要な育成場であることが示されつつある。しかし、この道東海域における0歳魚の初期生活史については、産卵場との関連を含めてほとんど知見が得られていない。太平洋系群の主産卵場は噴火湾周辺海域と考えられている(Tsuji、1989)が、道東海域にも小規模な産卵場の存在が報告されており、春季には浮游期のスケトウダラ稚魚も採集されている。さらに志田は、秋期の道東海域に分布する0歳魚の尾叉長組成を調べ、孵化時期の異なる2群が存在する可能性を指摘している。従って、道東海域に分布する0歳魚がどの産卵場に由来するものなのかは、0歳魚の動態を明らかにする上でも、また太平洋系群の資源構造を明らかにする上でも解明されるべき重要な課題として残されている。近年、耳石内部に日周的に形成される微細な輪紋構造(日周輪)を利用して、仔稚魚期から底層生活移行後の0歳魚の孵化時期や産卵期の推定が行われており、ベーリング海やアラスカ湾においては、推定された孵化日組成と産卵期から、幼魚と産卵場の関係が論じられている。噴火湾周辺海域の産卵盛期は1月から2月であるが、道東海域はこれより遅く、3月であることが報告されている。産卵時期の違いは孵化日組成に反映すると推測されることから、この産卵期の違いを利用して0歳魚と産卵場の関係を検討することができる。そこで本研究では、1996年から1998年秋に道東海域において採集されたスケトウダラ0歳魚の耳石日周輪を計数して、その孵化日組成を調べ、産卵場との関連を検討した。