著者
大森 正子 和田 雅子 吉山 崇 内村 和広
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.435-442, 2003-06-15
参考文献数
19
被引用文献数
6

老人保健施設における結核の早期発見方策を検討する目的で, 1都4県358の老人保健施設にアンケート調査を実施し, 169 (47.2%) から回答を得た. 施設は併設病院あり36.1%, 診療所あり12.4%, どちらもなし51.5%で, 平均年齢は入所者83.2歳, 通所者79.6歳, 平均利用期間は入所者7ヵ月, 通所者13ヵ月だった. 施設利用時に胸部X線検査を実施していた施設は入所者42.6%, 通所者23.7%, 利用期間中に結核検診を実施していた施設は入所者45.6%, 通所者15.4%だった. 職員への定期結核検診は94.7%の施設で実施していた. 入所者の食欲低下や全身倦怠といった症状は, 67.5%の施設で毎日点検していると答えたが, 呼吸器症状は18.9%と少なかった. 2週間以上続く呼吸器症状で病院を受診させる際, 入所者では93.5%の施設が文書を持たせ, 63.9%が胸部X線と喀痰検査を依頼すると答えたが, 通所者では医療機関受診を勧めるだけで特に症状を説明する文書を持たせず結果を確認することもしないと答えた. 結核患者発生率は, 施設利用者10万対104.6で, 調査地域の一般住民 (同年齢) の結核発生率よりやや高かったが有意の差は見られなかった. 老人保健施設は医療機関とみなされ結核予防法で健診の対象にはなっていない. 法的措置の基に効果的な患者発見方策を確立する必要がある.

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