著者
平井 敏博 越野 寿
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.353-362, 2006-07-10
参考文献数
26
被引用文献数
2 6

歯科補綴学は生命科学や健康科学をベースとする実学であり, 人々の健康・福祉の向上に貢献する役割を担っている. そして, その臨床の特徴は, 齲蝕や咬合・咀嚼障害などの疾患や障害に対しての「予防」と「治療」の面と, 歯などの喪失により損なわれた形態的・機能的障害の改善や回復を目指す「リハビリテーション」の面を併せ持っていることである. 歯科補綴学研究は, 健康科学, 生命科学の視点からの種々の研究によって, 必ずや補綴歯科治療の健康・福祉への重要性を明確に証明するであろう. 三叉神経が関与する咬合・咀嚼と高次脳機能や生体情報伝達系との関係など, 脳研究の進展が期待されるところである. また, 人口動態からみても, 本学会の学術研究活動は, まさに21世紀に求められる主要な医療のための活動の一つであるといえる.<BR>補綴歯科臨床の観点からは, 診察法, 検査法を含む診断学の充実が望まれる. 診断には, 補綴治療後の機能回復の程度を予測することも含まれる. このためには, 咀嚼機能評価法とともに, 顎口腔系を構成する各器官・組織の評価法の確立が待たれるところである.<BR>社団法人としての本学会の公益・社会活動も重要である. 専門医のみならず歯科医師全体の診療能力の向上による良質な医療の提供を図るとともに, 補綴歯科臨床の意義に関する活発な啓発活動を実践し, 「健康科学としての歯科補綴学」を広く国民に認識させるための方策を考え, 実行すべきである.

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