著者
ラランディソン ツィラブ 白武 義治
出版者
九州農業経済学会
雑誌
農業経済論集 (ISSN:03888363)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.29-40, 2007-01-15
被引用文献数
1

マダガスカルは、1982年当時、主食の米国内生産量は135万トン、消費量は157万トンであった。当時、政府は生産者米価アップによる生産性と農業所得の向上を図り、1983年に米流通の自由化政策をとった。しかし、その後、生産者米価は低く抑制され、消費者米価との格差が漸次拡大した。この状況下、米の生産性は低調であり1ha当り2トン水準で推移した。一方、首都住民の年間1人当り米消費量は平均120kgであり、エンゲル係数が70と極めて高いだけに、消費者米価が高位に不安定であることは首都住民の消費生活へ深刻な影響を与えてきたとみられる。そこで、本研究では、米市場自由下での低い生産者米価と生産者・消費者米価との格差拡大の要因を実証的に検討した。本研究は、米の大消費地首都アンタナナリブと近郊の米供給産地ブングラヴァ県を結ぶコメ生産流通関連業者を対象に行った。首都で米を扱う最大規模の卸売業者、輸入業者、零細小売業者及びブングラヴァ県マハスル地区の稲作農家45戸と産地集荷業者や産地精米業者を対象に実態調査を行った。本研究の課題に対する分析結果を列挙すると次のとおりであった。第1に、稲作農家の大半が、各流通段階の米価やマージン率及び米流通量などの情報収集・分析力はなく、貯蔵・輸送手段や選択すべき流通チャネルもなく、当該村の1集荷業者だけが販売先となっている。第2に、首都の卸売業者と地方の集出荷業者間には巨大な取引規模格差や市場シェア格差があり、それに基づく前者による後者の強力な後方統合がある。首都と地方の流通業者間にはクローズドな取引形態があり、前者に大きな流通マージンが発生する素地があった。第3に、特定の米流通業者が行う「自由な」取引に対し、適正な貯蔵量や公正な取引やマージン率設定、卸売市場の設置など一定の秩序を維持する行政による法的規制がない。この規制緩和は1983年に政府が採った米流通自由化政策によって始まり、この政策がその後の生産者・消費者米価間の格差拡大の要因、流通マージン拡大の要因であったとみられる。

言及状況

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こんな論文どうですか? マダガスカルにおけるコメ市場自由下での生産者・消費者米価間の格差拡大要因 : 大消費地首都アンタナナリブと近郊の供給産地を結ぶコメ流通関連業者を事例に(ラランディソン ツィラブほか),2007 … https://t.co/FFCA3F2H7J

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