著者
白武 義治 甲斐 諭 宮崎 卓朗 細野 賢治
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は次の諸課題を分析した。1.地域経済の担い手である中小規模食品製造業の存在構造2.伝統手延素麺製造業の展開条件-島原そうめん長崎県南高来郡手延素麺製造業を事例に-3.地域経済に寄与する焼酎製造業の展開条件-鹿児島県芋焼酎産業を事例に-4.韓国キムチ輸入後の日本におけるキムチ市場の動向と野菜漬物産業の構造変化5.地域農業再生と活性化に果たす農産物直売所一長崎県における農産物直売所を事例に-(補論)1.キムチ貿易と韓・日両国の野菜漬物産業の構造変化2.キムチ輸入量増加と日本野菜漬物産業の市場対応3.鹿児島県焼酎産業の成長要因と持続的発展条件-内発的発展論の視点から-これらの研究は中小食品製造業がアジア諸国の地域農業発展に寄与したことを明らかにした。
著者
盧 生奇 白武 義治
出版者
日本農業市場学会
雑誌
農業市場研究 (ISSN:1341934X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.33-44, 2005-12-31 (Released:2019-12-08)

The food industry is deemed an important economic sector in Japan. In the case of many remote areas, the food industry, in combination with primary industry activities, has been recognized as a major economic sector, leading regional economies in terms of creating job opportunities. Recently, however, due to the continuing overall economic slump, the food industry in Japan has been facing a sharp reduction in the number of companies and overall labor force. In addition, after joining the WTO in 1995, Japanese food companies have been thrown into severe business competitions in the international markets. Moreover, the LDC might compel the food industry to invest in environmental conservation efforts by 2007. The imo-shochu industry, a traditional Japanese food industry related closely to regional agriculture, stands as a leader in many regional economies, in both production as well as sales. As such, examining the major economic factors by which the imo-shochu industry has maintained such sustainable development is of value. Through use of endogenous development theory, this study empirically identified these factors through an examination of the imo-shochu industry of Kagoshima.
著者
ラランディソン ツィラブ 白武 義治
出版者
九州農業経済学会
雑誌
農業経済論集 (ISSN:03888363)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.29-40, 2007-01-15
被引用文献数
1

マダガスカルは、1982年当時、主食の米国内生産量は135万トン、消費量は157万トンであった。当時、政府は生産者米価アップによる生産性と農業所得の向上を図り、1983年に米流通の自由化政策をとった。しかし、その後、生産者米価は低く抑制され、消費者米価との格差が漸次拡大した。この状況下、米の生産性は低調であり1ha当り2トン水準で推移した。一方、首都住民の年間1人当り米消費量は平均120kgであり、エンゲル係数が70と極めて高いだけに、消費者米価が高位に不安定であることは首都住民の消費生活へ深刻な影響を与えてきたとみられる。そこで、本研究では、米市場自由下での低い生産者米価と生産者・消費者米価との格差拡大の要因を実証的に検討した。本研究は、米の大消費地首都アンタナナリブと近郊の米供給産地ブングラヴァ県を結ぶコメ生産流通関連業者を対象に行った。首都で米を扱う最大規模の卸売業者、輸入業者、零細小売業者及びブングラヴァ県マハスル地区の稲作農家45戸と産地集荷業者や産地精米業者を対象に実態調査を行った。本研究の課題に対する分析結果を列挙すると次のとおりであった。第1に、稲作農家の大半が、各流通段階の米価やマージン率及び米流通量などの情報収集・分析力はなく、貯蔵・輸送手段や選択すべき流通チャネルもなく、当該村の1集荷業者だけが販売先となっている。第2に、首都の卸売業者と地方の集出荷業者間には巨大な取引規模格差や市場シェア格差があり、それに基づく前者による後者の強力な後方統合がある。首都と地方の流通業者間にはクローズドな取引形態があり、前者に大きな流通マージンが発生する素地があった。第3に、特定の米流通業者が行う「自由な」取引に対し、適正な貯蔵量や公正な取引やマージン率設定、卸売市場の設置など一定の秩序を維持する行政による法的規制がない。この規制緩和は1983年に政府が採った米流通自由化政策によって始まり、この政策がその後の生産者・消費者米価間の格差拡大の要因、流通マージン拡大の要因であったとみられる。
著者
岩永 忠康 白武 義治 諸泉 俊介 宮崎 卓朗 西島 博樹 柳 純
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日本の小売業の経営は現在では大きく変化している。流通外資もその変化を促進している要因の一つである。日本では近年、流通外資の参入が活発化しているが、しかし近隣のアジア諸国ではより早い時期から流通外資が参入していた。これを研究することが日本での流通外資の展開方向を予測するうえで重要であると思われる。台湾での聞き取り調査では、中国と同様に欧米系の小売企業が好調な業績を残していることがわかった。また一方で日本国内とは逆に日系の小売企業が好調であることも明らかとなった。しかしいわゆる欧米系の流通外資と日系の小売企業はでは異なるところが多く、成功の要因は同じではない。現地化と標準化という点でみれば一般に日系の小売企業は標準化を強く指向しており、日本国内での店舗運営やコンセプトを多く台湾に持ち込んでいる。また欧米系の小売企業は取扱商品については現地化を進めており、店舗運営も現地のスタッフに依存することも多く見られる。日系小売企業で低価格業態を持ち込んではいる企業は少なく、またその成功・不成功も現時点では見極められない。しかし欧米系の小売企業は低価格を武器に現地資本の小売企業と直接的な競争を繰り広げている。この違いは母国での競争力の源泉が低価格にあるかどうかということに由来すると思われる点では中国での調査と同様である。つまり日系小売企業は低価格業態ではない形で標準化を基本に進出を果たしていることは確実であり、欧米系小売企業は現地消費者の低価格指向に対応する形で現地化を進めているのである。しかし日本の消費者の嗜好は台湾と比較すると必ずしも低価格のみに向かっているとはいえない。低価格業態の参入が地域の流通構造に与える影響はその意味では限定的で、流通外資の経営不振がそのことを物語っている。