著者
中島 還
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.83-92, 2005-06-30
参考文献数
46

摂食行動は, 生後吸畷運動から咀噛運動へと大きく転換する.この転換の背景には, 顎顔面口腔器官の発育変化に対応した中枢神経機構の変化があると考えられるが, その詳細はいまだ明らかでない.そこで本研究は, 近年開発された光学的電位測定装置をラット脳幹スライス標本に適用し, 三叉神経運動核 (MoV) とその三叉神経上領域の外側部 (1SuV) の問に存在する, 下顎運動の制御に関与すると考えられる局所神経回路の発育様態を調べた.前頭断脳幹スライス標本のさまざまな部位を電気刺激したところ, 1SuVにおいてMoVに興奮性の光学的応答を誘発する部位が見出された.さらに, 細胞外液のCa<SUP>2</SUP>+をMn<SUP>2+</SUP>に置換してシナプス伝達を遮断した状態でMoVを電気刺激すると, 1SuVに逆行性の光学的応答が認められた.次に, この興奮性出力を担う神経伝達物質を検討したところ, 1~6日齢の動物では, CNQXとAPVの同時投与, あるいはstrychnine投与により, 1SuV刺激に対するMoVの興奮性応答が減弱し, グルタミン酸受容体およびグリシン受容体の関与が明らかとなった.一方, 7~12日齢の動物ではCNQXとAPV投与でMoVの興奮性応答は抑制されたが, strychnine投与によるMoVの興奮性応答は増強し, グリシン性のシナプス伝達は抑制性に変化した.以上の結果から, ISuVからMoVに対するシナプス伝達様式が発育により変化することが明らかとなった.このような変化は, 吸畷から咀囑への転換に対応する可能性が考えられる.

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CiNii 論文 -  下顎運動制御に関与する局所神経回路の発育変化 https://t.co/fK9usqgV57

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