著者
古山 公英 黒岩 茂 河合 正計 立川 哲彦
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.85-91, 1983

メチル水銀を多量に含むマグロ肉の摂取に対しては同時に共存するセレンが毒性を減じているという報告がある.一方, マグロ肉を長期摂取すると染色体や病理所見に異常がみられるという報告もある.しかし, 比較的一般人よりマグロ肉を多食すると思われ, また, 毛髪中水銀濃度が高濃度であるマグロ漁船員には異常な所見がみられたという報告はない.そこで今回, 凍結乾燥したカジキマグロ肉45%含有する飼料を作製し, ネコに対して長期投与実験を行い生体への影響を追試した.3年間という長期投与期間のため, 急性伝染病の感染などがあり生存例が少なかったために明確な結論は得られなかったが, 1,175日屠殺例の臓器内蓄積量は対照群に比べ多く, 途中死亡例と比較しても数倍高い値であり, 長期飼育での蓄積の増加がみられた.小脳における総水銀に対するメチル水銀の割合はおのおの57.2, 93.2%と高く, 肝では逆にこの割合は低く, 肝での無機化が示きれた.染色体の異常および神経症状を主とする発症はみられなかった.しかし, 病理組職学的検索においてはメチル水銀中毒所見と思われる小脳の穎粒細胞の脱落, 消失とプルキニエ細胞の消失がみられた.このことはカジキマグロ肉の大量長期摂取は注意を要すると考えられるが, 今後さらに動物数を増加し, dose-response, dose-effectの関係を確かめる必要かあると考えられる.
著者
大野 彰久 鈴木 康生 高橋 真朗 向山 賢一郎 野島 洋 藤原 理彦 大山 まゆみ 山田 かやの 佐々 竜二
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.221-229, 1992
被引用文献数
11

小児歯科臨床における外傷症例の対応は, 予後管理も含めて, 近年ますますその重要性が高まってきている.これまで小児の歯の外傷に関しては, 症例や処置内容などの実態調査の報告は多いが, 受傷から来院までの経過を詳しく調査した報告は少なく, その実態を知ることは, 適切な処置を施す上でも大切なことといえる.今回, 当科来院までの経緯を把握すべく, 外傷の既往が比較的はっきりしている受傷後1週間以内に来院した者に限って, その内容を調査した・その結果, 当科来院状況では, 約10年前に比べ, 総来院者に対する外傷児の比率が高くなってきていた・年間の月別来院者数は, 8月がやや少なかった.受傷曜日と来院曜日をみると, 乳歯では木曜から土曜日の週後半の受傷者が若干少ないものの, ほぼ1週間変わりなく, また来院は圧倒的に月曜日が多かった.永久歯では火曜から土曜, 中でも金曜日に多く, 来院は週後半に漸増していた・受傷原因は, 乳歯・永久歯とも転倒が多くを占めた.受傷場所では乳歯で屋内が多いのに対し, 永久歯では屋外の事故も増加していた.受傷状態は, 乳歯では重度脱臼が最も多いのに対し, 永久歯では歯冠破折が多数を占めていた.受傷直後の受診医療機関をみると, 乳歯では近医 (歯科) と当科を受診した者で7割強と多かったが, 永久歯では直接当科を受診した者が半数を占めていた・当科来院までの日数は, 全体として24時間以内, あるいは2日以内の早期に来院する者が多く, 特に永久歯の場合に著明であった.これを受傷状態との関連でみると, 脱臼症例では乳歯・永久歯とも早期来院者が多く, 特に重度脱臼者では24時間以内の来院が7割を超えた.一方, 歯冠破折症例では, 乳歯ではやや来院が遅れる小児が増えるのに対し, 永久歯では24時間以内が8割程度と早期の来院が特徴的であった.受傷部位は上顎前歯部が圧倒的に多く, その処置は, 乳歯では固定処置, 永久歯では歯髄処置を含めた歯冠修復処置が多かった.以上のような調査結果から, 当科では外傷児の来院が増加傾向にあり, また受傷後, 早期の来院者が比較的多いことからも, 受け入れ側としての的確な対応と体制の整備が望まれることが判明した.
著者
山縣 健佑 積田 正和 谷口 秀和 小川 恭男
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.47-56, 1988
被引用文献数
10

粉末法パラトグラフィーを応用して, 歯の舌側面および咬合面を含む口蓋部への発音時の舌の接触範囲を観察する方法を開発した.研究方法 : 上顎模型の歯列と口蓋部にビニールシートを圧接成型して記録板を作製し, アルジネート粉末を塗布し, 口腔内に装着して発音させた.被験者は, 有歯顎者10名 (男9名, 女1名) で, パラトグラムの採得と発音誤聴率検査を行った.被験音は, 「サ, シ, ヒ, カ, キ, タ, ナ, ラ, ヤ」である.発音誤聴率検査は, この9語音が, それぞれ10回ずつ出現するようにして3語音ずつ組み合わせた検査語表によって行った.発音誤聴率検査の結果 : 記録板装着時には記録板なしよりも異常度はやや増加するが, 大部分は「ヒ」「キ」についての誤聴である.被験者1名で, 「キ」の誤聴率が30%であったほかは, 4%以下の誤聴で, 異常の程度は小さい.パラトグラムの計測結果 : 歯列に対する舌の接触部位は被験音によって異なり, 口蓋部への舌の接触範囲が標準的な場合には, 歯列との接触範囲も限られた部位で一定のパターンとなる.その範囲は, 臼歯では舌側咬頭頂をややこえる部分まで, 前歯部では基底結節から歯冠のほぼ中央まで接するのが典型的なパターンである.ただし, パラトグラムが非典型的形態と思われる被験者でも, 発音誤聴率検査では誤聴が認められない場合も多い.
著者
桑澤 実希 北川 昇 佐藤 裕二 赤坂 恭一朗 金原 大輔 瀬沼 壽尉 吉岡 達哉 石橋 弘子 今井 智子 新井 元 杉山 雅哉 吉江 正隆
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.387-390, 2004-12-31
参考文献数
6
被引用文献数
3

超高齢社会を迎えるなかで, 高齢者のQOLを支えるためには口腔の管理と口腔ケアが不可欠と考えられる.ここに大田区の特別養護老人ホームにおける昭和大学歯科病院の訪問歯科診療の実態と2003年度の訪問歯科診療の概要について報告する.我々は1998年より同施設の依頼により訪問歯科診療を開始した.現在は毎週木曜日の15 : 30~17 : 30まで, 歯科医師4名と歯科衛生士1名で往診を行っている.2003年度の歯科診療は同施設と歯科病院外来の合計で200件, 口腔衛生指導は226件で, 全ての合計は426件であった.2003年度の歯科診療は義歯に関するものが105件と半数近くを占めた.次いで, 歯科医師によるスケーリングなどの歯周治療が61件, 残存歯の削合や充墳処置など保存関連の治療が14件であった.他には, 抜歯・摂食相談・粘膜疾患など多岐にわたった.これより, 訪問歯科診療には各専門科の連携が必要であることが示唆された.歯科病院外来での治療は通院が必要かつ可能な場合においてのみ行われた.通院件数は43件あり, 内容は義歯の製作と充填処置・抜歯処置であった.しかし, 歯科病院への通院は入居者・施設職員ともに大変な負担を強いることとなるので, 今後は施設内でより高度な歯科治療を提供できるように診療器材を充実させる必要があると考えられた.
著者
Takashi MIYAZAKI Toshihiko SUZUKI Genshoku LEE Sinya FUJIMORI
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.47-52, 1992-03-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
14

Anodic oxidation is a popular method to deposit an oxide film on titanium with a thickness on the order of several hundred nm. In this study formation and some properties of anodic films of titanium under discharge conditions were investigated. Treated titanium specimens served as an anode in several electrolytes, and voltage was applied using the direct current power source. The discharge threshold voltage in each electrolyte decreased as the concentration of the electrolyte increased. Anodic oxidation of titanium was carried out on applying the voltage above the discharge threshold voltage, for example, at 100-130 V for a phosphoric acid solution (30 wt. %). Surface films with a thickness on the order of pm were formed by this treatment. Adhesion of the oxide film was superior when the anodic oxidation was carried out under moderate discharge conditions. SEM observations appeared the featured microscopic surface topography with many small (pm order) holes on the surface of the specimen treated by anodic oxidation under discharge conditions. X-ray diffractory analysis revealed that titanium oxides (TinO2n-1) and an amorphous anatase (TiO2) were formed by the anodic oxidation under discharge conditions.
著者
浅里 仁 井上 美津子 佐々 龍二 池田 訓子 伊田 博 島田 幸恵 向山 賢一郎 佐藤 昌史 山下 登
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.373-380, 2004-12-31
被引用文献数
2

パネルディベートを歯学部4年 (89名) の小児歯科学の授業に導入した.到達目標は, 「小児歯科治療への関心を育てることができる」, 「情報収集・整理能力を育てることができる」, 「論理的思考能力を育てることができる」, 「討論する力を育てることができる」, 「聞く力を育てることができる」, 「現実問題に対応する力を育てることができる」, 「患者の立場や心理への理解を深めることができる」の7つとした.テーマは「小児歯科治療に強制治療は必要か」とし, 患者および疾患の設定は, 「3歳児の左下乳臼歯のC<SUB>2</SUB>」とした.立場は保護者, 歯科医師 (肯定派), 歯科医師 (否定派) の3者とした.一日目は, スモール・グループ・ディスカッションを行馳立論文を作成空た.二日目は役割を立論者, 代表者, 応援団, 審判団とし, パネルディベートを行った.パ不ルァィベートの結果, 歯科医師 (肯定派) 班が勝者となった.学生のアンケート結果では, 到達目標の全ての項目で, 7割以上の学生が, 上記の能力や理解が "おおいにあがる" もしくは "少しあがる" と回答した.感想や意見では, パネルディベートに肯定的な意見, 否定的な意見, 配布した資料や実施方法についての問題点などがあげられた.
著者
中島 還
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.83-92, 2005-06-30
参考文献数
46

摂食行動は, 生後吸畷運動から咀噛運動へと大きく転換する.この転換の背景には, 顎顔面口腔器官の発育変化に対応した中枢神経機構の変化があると考えられるが, その詳細はいまだ明らかでない.そこで本研究は, 近年開発された光学的電位測定装置をラット脳幹スライス標本に適用し, 三叉神経運動核 (MoV) とその三叉神経上領域の外側部 (1SuV) の問に存在する, 下顎運動の制御に関与すると考えられる局所神経回路の発育様態を調べた.前頭断脳幹スライス標本のさまざまな部位を電気刺激したところ, 1SuVにおいてMoVに興奮性の光学的応答を誘発する部位が見出された.さらに, 細胞外液のCa<SUP>2</SUP>+をMn<SUP>2+</SUP>に置換してシナプス伝達を遮断した状態でMoVを電気刺激すると, 1SuVに逆行性の光学的応答が認められた.次に, この興奮性出力を担う神経伝達物質を検討したところ, 1~6日齢の動物では, CNQXとAPVの同時投与, あるいはstrychnine投与により, 1SuV刺激に対するMoVの興奮性応答が減弱し, グルタミン酸受容体およびグリシン受容体の関与が明らかとなった.一方, 7~12日齢の動物ではCNQXとAPV投与でMoVの興奮性応答は抑制されたが, strychnine投与によるMoVの興奮性応答は増強し, グリシン性のシナプス伝達は抑制性に変化した.以上の結果から, ISuVからMoVに対するシナプス伝達様式が発育により変化することが明らかとなった.このような変化は, 吸畷から咀囑への転換に対応する可能性が考えられる.

1 0 0 0 日本人の顔

著者
若月 英三
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.42-45, 2001-03-31
参考文献数
10
被引用文献数
1

モンゴロイドの基盤となる集団と近縁であると考えられるSundadontに属する南方系のフィリピン人 (マニラ市近郊に在住する女性) とSinodontに属する日本人 (昭和大学歯学部女子学生) と日本人の起源と関係の深い北方系の中国人 (青島市在住の女子高校生) の頭顔部の生体計測を行い, 統計的に検討した.計測項目は身長と頭顔面部の計測 (マルチンの基準) (頭長, 頭幅, 頭耳高, 頬骨弓幅, 下顎角幅, 形態顔面高とそれに顔面厚 (美濃部ら)) である.その結果, 頭顔部の計測項目において, 日本人は北方アジア系である中国人と南方アジア系であるフィリピン人との中間に値する計測項目が多かったが, 中国人と同じ値を示す計測項目もあれば, フィリピン人と同じ値を示す計測項目もあった.また, 日本人がこれら他の集団より大きい値を示す計測項目もあった.したがって, 現代の日本人の頭顔部は南方系縄文顔と北方系弥生顔の混血が現在でも進行中と考えられた.よって, この研究は, 埴原の日本人の起源についての仮説を支持する.
著者
菅沼 岳史 螺澤 庸博 小野 康寛 伊東 令華 馬場 一美
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.111-116, 2012

本学では学生のコミュニケーション能力,自学自習能力,問題解決能力,臨床推論・判断能力などに代表される基礎的臨床能力を向上させるために,南カリフォルニア大学歯学部にて開発された仮想患者 Virtual Patient(以下VP)システムをべースにした VP システムを開発し,導入を進めている.このシステムは,学習者がいつでもどこからでもWebにより学内サーバにアクセスして学習することができ,テキストベースで行う医療面接,歯科基本セットから器具選択して行う診査部分と,検査法,診断,治療法の選択を行う5つのパートで構成されている.現在運用されているVP症例は,昭和大学教育研究推進事業として各講座,診療科に提出していただいた症例の中から,医療面接から治療法の選択までのフルバージョンの3症例と医療面接のみの5症例を作成,運用している.本稿では,最新版のシステムの概要と現在までの運用実績とその評価および今後の展開について紹介する.
著者
江川 薫 野中 直子 星野 睦代 高野 真 滝口 励司
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.74-85, 1999-03-31
被引用文献数
1

骨を構築する基質線維は, 圧縮, 牽引, 歪み, 振れなどの応力に対抗するための適合性をもった配列を呈している.骨に加わる応力と骨層板および線維性基質の配列との係わりを検討する目的で, 解剖学実習用男性遺体の脛骨を用いて, 基質線維の配列を高分解能の走査電子顕微鏡で立体的に観察した.緻密骨層板の表層基質線維を観察するための試料は, 実体顕微鏡下で外骨膜の線維層を剥離した.基礎層板とハバース層板の線維性基質を観察するための試料は, 緻密骨の水平断面と垂直断面を作製して, 切断面の研磨を行った.すべての試料はEDTAで脱灰を施し, トリプシン処理後, 導電染色, 上昇アルコール系列による脱水, 液化炭酸ガスによる臨界点乾燥, 白金-パラジウムのイオンスパッタコーティングの後, 電界放射型走査電子顕微鏡で観察した.筋の付着がない脛骨体内側面の外基礎層板の最表層は大部分が骨の長軸方向に配列された基質線維束で構築されていた.脛骨体外側面の中央部の基質線維束も骨の長軸方向に配列されていた.脛骨体外側縁には約500μmの幅で骨間膜が基質線維束に侵入していた.脛骨体近位端外側面の最表層基質は交錯した基質線維束で構築され, 基質線維東間には前脛骨筋および縫工筋の腱が侵入していた.脛骨体前縁では基質線維束の大部分は骨の長軸方向に配列されていた.脛骨体後面の近位骨幹端の最表層は交錯した基質線維束で構成されていた.後面中央部および下部の最表層の基質線維束はほぼ骨の長軸方向に配列されていた.脛骨体の内表面の最表層は大部分が骨の長軸方向に配列された基質線維束で構築されていた.脛骨体の外基礎層板では約5μmの厚さの層板と約3μmの厚さの層板が交互に配列されており, 交互に隣接している層板の基質線維束はやや斜めに交叉していた.ハバース層板を構成する基質線維束はほぼ上下方向に配列された基質線維束からなる厚さ約4μmの層板と, 基質線維束がほぼ同心円状に配列された厚さ約2μmの層板とが交互に配列されていた
著者
野中 直子
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.135-149, 1998-06-30
被引用文献数
5

骨層板が積層して構築されている成熟骨では緻密質内にはコラーゲン細線維がほぼ一定の方式にかなって配列されている.すなわち, 骨層板内のコラーゲン細線維の配列の主方向は骨に作用する応力の方向と一致していて, 骨組織に加わる牽引や歪みに抵抗しうる力学的合理性をもった配列を呈すると考えられている.一方, 海綿質の骨小柱は圧迫に抵抗するように応力線に一致した配列を示しており, 骨全体としての力学的強度の支えとなっている.下顎骨においても外形の異なった骨と共通の内部構造を備えている.下顎骨には筋の作用による牽引力が他の形態の骨と同様に加わるが, 歯からの咀嚼圧も応力として加わり, 成人の下顎骨を構成している骨層板は咀嚼筋による牽引や咀嚼力に適合した構築を呈していると考えられている.本研究では下顎骨の緻密質の骨層板を構築しているコラーゲン細線維と, 下顎骨に加わる応力とについて検討する目的で, 解剖学実習用男性遺体の若年者から摘出した有歯下顎骨の基質線維構築を高分解能の走査電子顕微鏡で観察した結果を考察した.若年者の下顎骨の外基礎層板の最表層は全域が束状のコラーゲン細線維からなる基質線維束で構築されていたが, 基質線維束は下顎骨の各部では骨に加わる応力に適合した配列を呈していた.歯槽縁は密に配列された近遠心方向に走向する基質線維束からなっていたが, 基質線維束は上前方から下後方への配列に変化して歯槽部を構築する線維束に移行していた.歯槽部はほぼ上下方向または上前方から下後方に配列された基質線維束で構築されていた.歯槽部から下顎体部への移行部では上前方から下後方に走向する基質線維束は下顎体部では近遠心的な配列になる.下顎体部はほぼ近遠心方向に走向する基質線維束で構築されており, 下顎底部も下顎骨の下縁に平行な近遠心的な配列を示す基質線維束からなっていた.下顎体内側壁では顎舌骨筋線の上部は上前方から下後方に走向する基質線維束で構築されていたが, 下後方への基質線維束は顎舌骨筋線上で近遠心方向に配列された線維束に移行していた.咬筋粗面では基質線維束の間隙に咬筋の腱が数多く侵入していた.外基礎層板では最外層は基質線維束がほぼ近遠心方向に配列された約2.5μmの厚さの層板からなっており, 隣接する層板は約1μmの厚さで基質線維束はほぼ上下方向に配列されていた.外基礎層板では基質線維束の走向の異なる層板が交互に積層されていた.ハバース層板を構成する骨単位は約4μmの厚さの層板と約1μmの厚さの層板とが交互に配列されていた.骨単位を構成する厚さ約4μmの層板内の基質線維束はほぼ長軸方向に配列されており, 厚さ約1μmの層板内の基質線維束は同心円状の走向を呈していた.骨単位の各層板内では基質線維束は平行に配列されているが, 隣接した層板問では基質線維束は斜めに交叉していた.
著者
澤田 久 山縣 健佑 張 仁彦 下平 修
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.125-151, 1996-06-30
被引用文献数
9

高速VTRシステムを用い, 顔面の運動経路を3次元解析した.画像処理装置によるオートトラッキングを行うための標点を作製し, 被検者顔面皮膚上に皮膚用粘着材で貼布した.被検者は, 上下顎無歯顎者3名, 被検音は, 短文「桜の花が咲きました」である.計測部位として, 鼻下点, 上口唇赤唇部上縁, 下口唇赤唇部下縁, モダイオラス部, オトガイおよび切歯点として下顎義歯の中切歯唇面からワイヤーを口腔外へ延長し, 標点を設けた.発音中の被検者の顔面正面と側貌を2台の高速テレビカメラ (nac社製) により高速ビデオカセットレコーダー (nac社製) で録画した.同時に, 音声を, 同一ビデオテープに録音した.得られた音声出力をDSP Sona-Graph (KAY社製Model 5500) に導入し, time-waveおよびスペクトログラム (3D Sonagram) から各音の発生および終了時点を求め, 解析対象区域を規定した.画像解析装置 (Image Data : ID-8000, nac社製) により解析対象区域間の各標点をオートトラッキングして自動解析し, 3次元座標を求め, コンピュータに転送し, 3次元運動解析ソフト (MOVIAS 3D, nac社製) を用いて立体構築した.解析項目は, (1) 空間的移動距離累計 (TL), (2) 計測区分開始点と終了点間直線距離 (SL), (3) TLとSLの比率 (TL/SL), (4) 立体移動範囲 (CR), (5) 方向変更角度 (TH) である.以上の結果, 下顎および各計測点の被検音全体の発音中の運動経路のTL, CR, THは, 無歯顎時 (A) より義歯装着時 (C) の方が小さいことが明らかになった.また, 被検音に含まれる他の母音および各子音の中で, /s/, /∫/, /m/発音中には, 特異の運動経路を示すことが認められた.
著者
松本 光吉 富永 明彦 斎藤 祐一 若林 始
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.233-236, 1993
被引用文献数
7

1954年, Nelsonらによって開発されたタービンが世に出て, 約40年の歳月が流れたが, 依然として, タービンによる歯質切削時の不快音, 象牙質切削時の麻酔の必要性は完壁には改善されていない.これらの諸問題を前進させるために開発された酸化アルミニウム粉末噴射法について, 噴射時のエナメル質, 象牙質切削面の形態学的変化を検討するために本実験を行った.被験歯として, 人の抜去歯20本を使用した.酸化アルミニウムの粉末粒子の径は約27μmと約50μのものを使用した.また, 噴射装置は, American Dental Laser社のKCP-2000を使用した.噴射速度はSlowが80 psi (5.6) kg/cm<SUB>2</SUB>, Mediumが120 psi (8.4kg/cm<SUB>2</SUB>), Highが160 psi (11.2kg/cm<SUB>2</SUB>) であった.切削法は粒子の大きさと切削速度を組み合わせて, 約1-2mmの距離より粉末を歯質表面に噴射した.なお, チップの直径は約0.34mmで, 噴射時に生じる切削片や粉末は付属のバキューム装置で吸引した.切削而の観察は, 肉眼的, 実体顕微鏡, 走査型電子顕微鏡によって行った.その結果, 酸化アルミニウムの粉末の粒子の大きさ, 切削速度の差によって, 切削面の形態学的差はなく, 滑沢な, 砂丘状を示した.酸化アルミニウムの粉末および切削歯質は噴射時に大方は飛散してバキュームにより吸引されたが, 一部は歯表面に残存していた.特に象死質では, 躯細管内に圧入されていた.歯融象頒の切削時に, 周囲と明らかに区別される物質が観察された.なお, 以上の観察所見には炭化や溶解.嫉凝固などの変化は観察されず歯質の本来の色調を示していた.
著者
奥津 朋彦 小林 誠 小出 容子 高田 貴虎 滝口 尚 山本 松男
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.165-172, 2007-09-30
被引用文献数
1

近年, 培養歯根膜細胞やそこから分取した組織幹細胞の歯周組織再生への応用は, より確実な歯周組織再生療法を確立するための一つの戦略であると考えられている.しかし, この細胞集団はヘテロであり, 現時点では種々の問葉系細胞の前駆細胞や問葉系幹細胞がどの程度存在するかを直接的に知ることはできない.そこで本研究では, このような細胞療法を確実なものにするための第一段階として, 培養ヒト歯根膜細胞 (HPL cells) の骨, 脂肪, 軟骨への分化能を, コントロールとして使用したヒト骨髄問葉系幹細胞との比較において定性的に評価した.その結果, HPL cells中には骨芽細胞様細胞が豊富に存在しており, また脂肪細胞前駆細胞も存在するもののその数は著しく少ないこと, 一方, 軟骨細胞前駆細胞の存在の可能性は著しく低いことが明らかになった.さらに, 脂肪細胞前駆細胞はHPL cellsから分取したalkaline phosphatase陽性細胞率の低い細胞集団に多く存在していた.
著者
古川 周 山縣 健佑 金 修澤 北川 昇
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.147-163, 1992
被引用文献数
13

調音動作のスムースさを判定するためには, 音発生中のみならず, それ以前の口腔の動態を観察することが重要である.そこで, 正常者10名について [sa, ma] の発音前後を含めて, (1) 切歯点, (2) オトガイ点, (3) オトガイ中間点, (4) 下口唇, (5) 上口唇の運動経路を解析した.MKGによる切歯点または顔面側貌上の標点とリアルタイム音声周波数分析表示装置 (SSD) による声紋の両画面をハイスピード・ビデオ装置によって同一テープに記録する.テープを低速再生し, モニター上で声紋像を参照して子音発音時点を求め, 調音運動開始から子音発音終了後までを4時限に区分して標点の座標を入力する.運動経路の複雑さを表現するため, 直線距離 (SL), 移動距離累計 (TL), 迂回度 (T/S), 移動範囲面積 (AR), 方向変更角度 (TH), 速度 (V) を演算処理するソフトを開発し, 比較したところ以下の結果を得た.1.調音運動開始時から子音発音開始時までは複雑な動きをするが, 特に子音発音開始時点の400msec前から200msec前までの間は移動が少ない.2.上口唇以外では, 子音発音開始前より子音産生中の方が直線距離と移動範囲面積, 速度は大きく, 迂回度と変更角度の値が小さく, 子音発音中には直線的に早い速度で移動している.3. [sa] では, 切歯点では音産生前にいったん開口し, 子音開始位で再び咬頭嵌合位に接近する.子音発音開始位では, ほとんど静止状態になるが, 子音発音中央位では開口し, 速度も大きい.したがって, 子音発音開始位で [s] 音の固有の構えになる.4. [ma] では, 下口唇とオトガイ点が子音開始位で [m] 音特有の構えになる.切歯点は子音発音開始時点の200msec前から子音発音開始位までの動きが小さく, むしろ子音産生に先だって一定の構えになる.5.このように単音節の発音時には, 発音中央位よりも子音開始位あるいはその直前の位置が重要と思われる.
著者
佐野 恒吉 江川 薫 野中 直子 滝口 励司
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.343-352, 1999-12-30
被引用文献数
1

硬組織の形成部位のカルシウム (Ca) やリン (P) の含有量を定量分析する方法ではエネルギー分散型X線検出器 (EDX) を用いる方法が分析例の多さ, 試料の扱い, そして分析精度の点で現在のところ最も優れた方法である.しかし, 歯科領域の分析ではCaとP濃度は同時に測定されることが多く, EDXの通常の設定では, 硬組織, 特に歯の象牙質における管間及び管周象牙質などのように, 分析したい部位が必ずしもCaやPのX線発生領域よりも広くない場合が多い.本研究では, このEDXが据付られた走査電子顕微鏡S-2500CX (日立) で, 硬組織上にどの程度まで小さな分析領域を取ることができるかを, 加速電圧の変化に伴う試料中のX線発生領域の変動と試料の分析面を傾斜させることにより分析値の変化を観察した.そして, これらの結果を基に, 走査電子顕微鏡 (SEM) の分析仕様の限界の7kVの加速電圧で, ラットの下顎の切歯断面の象牙質の表面をX線検出器に向かって角度27.5°に傾斜させてX線分析領域を最小にして, CaとPを分析できた.最初は, 象牙質の唇側の管間及び管周象牙質でSEMの加速電圧の違いによる分析値の変化を観察するため, 加速電圧が7と10kVそして15kVでCaとPの含有量の分析を行った.この唇側の結果から加速電圧が7kVで最も正確な濃度が得られたが, 10kVのときの値に対して有意な違いがなかった.次に, 加速電圧7kVの唇側の結果に合わせて舌側とその中間の近心側と遠心側の管間及び管周象牙質も同様に分析した.その結果, 管周象牙質のCa及びP濃度に有意差が見られず, エナメル質に関連する唇側の管周象牙質のCa含有量は舌側管周象牙質より高かった.
著者
梅澤 正樹 今泉 薫 樋口 大輔 丸山 淳 本村 一朗 吉野 智子 胡田 由美子 船登 雅彦 川和 忠治
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.195-203, 1996-09-30
被引用文献数
12 7

本研究は, 平成5年度に昭和大学歯科病院第一補綴科で装着されたクラウンおよびブリッジに関して, その総製作数, 種類および割合, 支台歯の有髄, 無髄等を統計的に調査し, 歯冠補綴治療の現状を把握することを目的として行われ, 以下の結果が得られた.1.クラウンとブリッジの総数は1,202個で, クラウンが1,022個 (85.1%), ブリッジが180個 (14.9%) であった.2.クラウンにおいて最も多いのは全部鋳造冠572個 (56.0%) であった.次いで陶材焼付鋳造冠183個 (17.9%) とレジン前装鋳造冠183個 (17.9%) で, 陶材焼付鋳造冠は平成4年度の288個と比較して大幅に滅少した.また平成3年度に一例も装着されなかったレジン前装鋳造冠が平成4年度では110個 (10.2%), 平成5年度では183個 (17.9%) と大幅な増加を示した.3.クラウンは前歯部ではレジン前装鋳造冠が約50%, 小臼歯部では全部鋳造冠が約70%を占め, 大臼歯部では約90%が全部鋳造冠であった.4.ブリッジは臼歯部に約60%, 前歯部および前歯部から臼歯部にわたるものが, それぞれ約20%ずつ装着されていた.5.ブリッジは前歯部, 臼歯部において1歯欠損2本支台歯が最も多かった.前歯部から臼歯部にわたるものにおいては, 2歯欠損3本支台歯が多かった.6.クラウンにおける保険診療は74.3%であり, ブリッジにおいては76.7%であった.7.クラウンの支台歯における無髄歯は88.8%, インプラント支台0.9%であり, ブリッジにおいては無髄歯が75.4%であった.
著者
村上 正治
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.148-167, 1993
被引用文献数
6

極小未熟児・超未熟児乳歯の形態学的特徴を客観的に明らかにすることを目的として, 本研究を行った.対象は本学小児歯科外来で管理中の, 出生体重1500g未満の小児のうち, 現在全身状態に問題のない小児50名である.資料は, これら対象児が平均4歳0か月になった時点より得られた口腔内診査記録・口腔内写真, 歯列石膏模型および交換期により脱落した抜去歯である.その結果以下の結論を得た. (1) 模型分析より, 歯の大きさの平均は歯冠近遠心幅径において, 全歯で標準値の-1SD前後小さく, 歯冠唇 (頬) 舌径では, ほぼ全歯で標準値の-1SD以内の小さい値を示した. (2) 形態異常については, 癒合歯が健常児にくらべ高い発現率 (14.0%) を示した・ (3) エナメル質形成不全は, 50名中41名に認められ, その発現率は, 82.0%であった. (4) エナメル質形成不全における減形成の発現部位は, 上顎前歯部に多く, 石灰化不全は上下顎の臼歯部に多く認められた. (5) 歯の平均微小硬度数は, エナメル質で308.4, 象牙質で42.9で, ともに健常児にくらべ低い値を示した・ (6) 光顕的観察では, エナメル質新産線の発現位置が健全歯に比較して切端寄りに認められ・Retzius線が明瞭に認められた.以上の結果から極小・超未熟児の乳歯の大きさは小さく・形態異常・形成異常が多く, 歯質の硬さは低く, 石灰化不良な状態であることが示唆された.
著者
池田 亜紀子 勝部 直人 長谷川 篤司
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.284-289, 2007-12-31
被引用文献数
7

2006年度からの臨床研修必修化と同時に, 本病院における研修医数は従来までの倍以上となり, 研修システムの改革, また, 研修施設の増加などで対処しているものの, 病院全体の患者数に変化のないことから, 臨床研修医の担当する患者が相対的に少ない状況となっている.本研究では, 今後の研修医担当患者の確保のための資料とすることを目的として2003年4月から2006年3月までの3年間に昭和大学歯科病院総合診療歯科を受診した新患患者の, 初診時年齢, 性別, 初診時医療面接により得られた疾患について調査した.さらに, 研修医が担当した患者についても同様の調査を行い, 病院全体の動向との違いについて検討し以下の結果を得た.総合診療歯科での初診医療面接を経験した患者総数のうち研修医に配当される割合は約18%であった.男女比に関しては総合診療歯科に来院した新患患者総数と研修医配当患者総数に違いはなく, 女性が男性の1.5倍多く来院しており, 女性は20代, 30代, 50代の順に, 男性では20代が一番多く来院していた.さらに月別の新患患者の割合に関して, 総合診療歯科で医療面接を行った新患患者総数では12月が1年間の新患患者の6.0%で最も少ないほかは年間を通してほぼ一定していた.一方研修医に配当された患者では5月, 6月がそれぞれ1年間の新患患者の13.5%, 12.3%を占め, 3月が4.3%と最も少ない結果となった.疾患別では, 研修医に配当された患者では, う蝕・WSDが39.6%と圧倒的に多く慢性歯周炎が19.2%, ついで有床義歯, 根尖性歯周炎の順であった.これに対して総合診療歯科に来院した新患患者総数の結果ではう蝕・WSDが23, 5%と最も多く, 慢性歯周炎が17.1%ついで根尖性歯周炎, 有床義歯の順であった.根尖性歯周炎の割合は総合診療歯科来院新患患者総数と比べて研修医に配当された患者数では明らかに低い.根尖性歯周炎を主訴として来院する患者の多くは急性症状を伴っており, 1年次研修医では急性症状を有する患者には適切な対応がしにくい場合が多い.また総合診療歯科では研修医がすべての初診患者に対し, 治療計画立案のための資料採得を行うため, 初診時に急性症状のある患者は配当しにくいという現状があるが, これらは経験すべきことであり, 急性症状に対応できる能力を有する指導医, 協力医の数の充実が望まれる.
著者
山崎 亨
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.48-67, 1983

本研究は24-26時間という短い時間で吸収と形成が行われているウズラの骨髄骨関与細胞を超薄切片法および凍結割断レプリカ法により検索したものである・産卵期ウズラをKarnovsky液で遷流固定し10%EDTA溶液で脱灰, オスミウム酸で後固定したのち酢酸ウランでブロック染色をし, 通法に従いPoly Bed 812で包埋, 薄切した.酸フォスファターゼ反応にはGomoriの鉛法, カルシウム反応にはアソチモン酸カリウム溶液を用いた.凍結割断レプリカ法としては脱灰試料をグリセリソで浸漬置換したのち-110℃で割断し, Pt-C蒸着を行ってレプリカを作製した.超薄切片では破骨細胞に活性型, 移行型および休止型の像が観察され, なかでも活性型破骨細胞は骨面にrufned borderを伸ばし, 同部では細胞膜部に骨の吸収と関連があるといわれる "sub unit" がみられた.またその部の酸フォスファターゼ反応およびカルシウム反応でも移行型や休止型破骨細胞に比べ強い反応を示した.一方, 骨芽細胞には活性型および休止型の像がみられ, 活性型細胞は休止型細胞に比べてゴルジ装置, 粗面小胞体がより多く観察された.この細胞のカルシウム反応は細胞膜, ミトコソドリアに著明にみとめられた.さらに骨細胞では幼若型骨細胞, 成熟型骨細胞および変性型骨細胞と区別できたが, 幼若型骨細胞は骨芽細胞に類似し骨形成, 逆に成熟型骨細胞はライソゾーム穎粒やpinocytotic vesicleの所見より骨吸収機能をもつことが示唆された.以上の細胞のレプリカでの膜内粒子の1μm<SUP>2</SUP>当りの値をみると, 活性型破骨細胞ではrufHed border部が2,000/μm<SUP>2</SUP>と休止型の2倍の数を示し, 骨芽細胞も活性型は800/μm<SUP>2</SUP>と休止型の2倍の数であった.これに対し骨細胞は変性型骨細胞を除き, 他は数に大きな差はなく幼若型骨細胞, 成熟型骨細胞ともに400/μm<SUP>2</SUP>前後の数を示した.以上のことより膜内粒子の存在は, 骨組織の吸収と形成のための物質の流れ, および酵素的な働きと重要な関連をもっていることが示唆された.