著者
三鴨 廣繁 山岸 由佳
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.257-267, 2008-06-10
参考文献数
16
被引用文献数
2

最近5年間の性感染症の疫学データを見る限り, 4つの代表的な性感染症である性器クラミジア感染症, 淋菌感染症, 尖圭コンジローマ, 性器ヘルペスのうち, 男女ともに前二者は, 減少もしくは横ばい傾向にある. その背景には, 医療関係者および行政機関による性感染症に関する啓発活動の成果も関係していると考えられる. しかしながら, 性器クラミジア感染症, 淋菌感染症ともに依然として1995年頃のレベルには戻っていないことに着目する必要がある. 特に, ウイルス感染症である尖圭コンジローマ, 性器ヘルペスにおいては, わずかではあるが増加傾向を示していることも注目に値する. さらに, 日本人男性において, 性感染症としてのHIV感染も増加しつづけている. また, STD関連微生物の性器外感染, 性器クラミジア感染症における持続感染, 淋菌感染症における薬剤耐性菌, 性感染症関連微生物としてのマイコプラズマ・ウレアプラズマの意義などが明らかにされつつある. STDの性器外感染に関しては, orogenital contactの一般化など最近の性行動の多様化を背景として, クラミジア・トラコマチスや淋菌の咽頭感染などが増加しているという報告も多い. これらの微生物が咽頭に感染しても無症状であることも多いが, 確実に第3者への感染源となり得る. したがって, STD対策にあたっては, 耳鼻咽喉科医や内科医の協力が不可欠な時代を迎えたと言っても過言ではない. さらに, クラミジア感染症では, 咽頭に感染した症例では, 性器に感染した症例と比較して, 治療に時間がかかることも明らかになってきている. 臨床医には, 現代の性感染症から国民を守るために, 精力的な活動を展開していくことが求められている.

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