著者
高橋 剛一郎
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 = Ecology and civil engineering (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.199-208, 2000-12-21
参考文献数
26
被引用文献数
7 5

魚道の機能評価について,従来の評価を概観し,望ましい評価のあり方を考察した.魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業(1991)以降,魚道が多数造られた1994年以降に砂防学会で発表された魚道関係の講演や論文を調べたところ,限定的な条件下での遡上実験によって効果を推定するものが大半であった.大ダムである小牧ダムの魚道は,魚を遡上させることは可能であったが,最終的に失敗に終わり,単に魚を遡上させること以外のさまざまな要素が関係していることが示唆された.現在の魚道技術の粋を集めて造られた長良川河口堰の魚道については,設置者側が魚道を遡上した魚の個体数などをもとに効果があるとしているものの,独自に魚道の効果や堰の影響を調査している研究者らはアユ,サツキマスなどの生態への堰の影響は大きいとし,魚道の効果に対し厳しい評価をしている.このように,従来の魚道の評価の多くは限定的な条件下での遡上実験によるなど,魚道の機能の一部を取り上げたものであり,これでは不十分である.本来そこに生息していた魚が,特別の保護手段なしに世代交代できる環境を保証するという理念に照らせば,魚の生活にどのような影響を与えているかという総合的な評価が必要である.実際的な調査として,個体群動態に基づいた手法を提案する.水系といったまとまった地域における魚の全体的な分布,季節的な分布・移動や年齢構成・性比などを把握することにより,ダムや魚道の影響を総合的に評価することができる.個体群生態学に基づいた調査の指針を開発すべきである.

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こんな論文どうですか? 魚道の評価をめぐって(高橋 剛一郎),2000 https://t.co/HlYdAd9VoQ 魚道の機能評価について,従来の評価を概観し,望ましい評価のあり方を考察した.魚がのぼりやすい川づくり推…
1 1 https://t.co/kTn66v0kxS
こんな論文どうですか? 魚道の評価をめぐって(高橋 剛一郎),2000 https://t.co/07AM4gNCJT 魚道の機能評価について,従来の評価を概観し,望ましい評価のあり方を考察した.魚がのぼりやすい川づくり推…

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