- 著者
-
渡部 恵司
中島 直久
小出水 規行
- 出版者
- 応用生態工学会
- 雑誌
- 応用生態工学 (ISSN:13443755)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.1, pp.95-110, 2021-07-28 (Released:2021-10-01)
- 参考文献数
- 173
- 被引用文献数
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現在,水田の圃場整備は環境との調和に配慮しながら行われており,カエル類は整備の際に保全対象種に選定されることが多い.本論文では,カエル類の生息場の効果的な保全に資するため,農村地域でみられるカエル類の生態等の特徴,圃場整備による影響および生息場の保全策の知見を整理し,今後の課題について論じた.第一に,農村地域に生息する在来 13 種・亜種について,繁殖場-生息場間の移動や吸盤の有無等の特徴を整理した.第二に,圃場整備後にカエル類が減少する理由について,(1)表土を剥ぎ取ったり,事業前にあった土水路を埋めたりすることにより個体が死亡すること,(2)コンクリート水路への転落により個体が生息場間を移動できないこと,(3)区画整理や畦畔のコンクリート化により畦畔の面積が減少,畦畔の質が変化すること,(4)乾田化によりアカガエル類・ヒキガエル類の繁殖場やツチガエル幼生の越冬場が消失することを解説した.第三に,水田周辺におけるカエル類の生息場の保全策として,(1)工事前に個体を保護し,整備済みの水田や事業地区外に移動する,あるいは繁殖個体を再導入すること,(2)コンクリート水路に個体が転落しないように蓋を設置する,あるいは転落個体が脱出できるように脱出工を設置すること,(3)環境保全型水路やビオトープ等の設置により生息場・繁殖場を創出すること,(4)整備後の水田において有機栽培・減農薬栽培や中干の延期・中止,冬期湛水等を行うこと,(5)外来生物対策について解説した.今後の課題として,これからの農村では,担い手への農地集積や水田の更なる大区画化,スマート農業技術の導入等が進むと予想され,このような農村の変化によるカエル類の生息場への影響評価,および負の影響への対策の検討が必要である.